ゆきうさぎ
□3章 雪と兎
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雪は止む事もなく日々だけが過ぎ、
ついに、さくらの退院の日。
さくらは病院の裏口からこっそりと出た。
入院の時、じろじろと見られた事をまだ気にしてか、誰も居ないことを確認して、手配してあったタクシーに乗る。
「どちらまで?」
魚のような頭の天人が運転手だった。
『あ、吉原…まで。
あの、大雪ですから、無理しないで…
行ける所まで、お願いします。』
魚天人の運転手はにっこりと笑い、
「はいよ。じゃ…」
ガチャ、ガチャ。
ドアが開く音がして、助手席とさくらの隣に同族の天人が乗った。
『え?』
「俺達の大使館まで来てもらおうか。
…雪晶石のお嬢さん。」
『せっしょうせき?』
初めて聞く単語と、この状況が理解できない。
でも、分かるのはひとつ。
(私……危ない目に遭ってる……!)
急いでタクシーから降り、全力で逃げる。