サディスティック・スノウ

□十一話 ただの
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私が銭湯から戻って数分。


沖田隊長の部屋に入った私が真っ先に発見したのは、既にお布団で就寝中の隊長様だった。


赤地に変な目が描かれたアイマスクをかけ、スヤスヤと眠っている。


……何か、イラっとしました。



だからといって安眠妨害して自分の寿命縮める真似はしない。


私だって、命が惜しい。




私は足音を立てずに押し入れに向かう。
隊長の布団を少し跨いで、そーっと、そーっと…。




と、跨ぎ終えたその時。



ヒュッ



風を斬る音がして、後ろから私の首筋に冷たい物が当てがわれていた。


コレ…刀だ…。


思わず身がすくみ、動けなくなった。

私はこの刀の持ち主が分かっている。


『おおおおおお、おき、沖田たたたたた隊長…?』


ガタガタと震える体。


「……あー、悪ィ。寝惚けた。」


私と相反して、緊張感の無い声が聞こえた。


『寝惚けて刀突きつける程私を殺したいんですか!?』


やっと刀が離された。


「てめぇが安眠妨害するからでィ。」


『妨害しないように最大限の努力したんですけど!?』


足音ひとつ立ててない、はず。
私が沖田隊長の方へ振り向くと…



「………。」


あ、もう寝てるし。







『………。』


本当に妨害してやろうかと思ったけど、
なんとか我慢して押し入れに入った。


そして、暗がりで布団を敷いて横になる。

戸を閉める。




真っ暗闇の中では、自分の息づかいしか聞こえない。


私が眠りに落ちるのに、そう時間はかからなかった。
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