サディスティック・スノウ
□三話 バイバイ日常
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私は、生きている。
あの夜、隕石が私にぶち当たって、そのまま死んだかと思った。
でも、生きている。
良かった。
いやでも、モブならばここで死んでた方が役得?
いやいや、今は生きてた事を有り難く思おう。
私の名前は神崎さくら。
解放された吉原桃源郷で老舗和菓子屋の弟子をして暮らしている。
ちなみに年齢はセブンティーン。
あれ?おかしいな。
私はモブのはずだよね?
何でこんなに細かく設定が決まってるの?
そう。
私はモブ。
モブなのよ。
銀魂の世界で目立たず、世界観の雰囲気を出すためだけに存在する空気。
言わば背景。
目立ってはいけない。
設定なんか有っちゃいけない。
でも、何故か名前があり、隕石がぶち当たって入院した。
そして私は今日、退院する。
荷物を纏めていると、ふと窓の外の景色が目に入った。
紅く色づき始めた木の葉。
しかし、今は七月の中旬。
おかしい。
ここ最近、予想最高気温が25℃を越える所を見たことがない。
何があったんだろう?
今の時期では観測史上最低気温を叩き出す日々。
私は一抹の不安を覚えながらも、荷物を纏める手を進めた。
確か、病院から出ればすぐにタクシーが止まっているはず。
それに乗って帰ろう。