ゆきうさぎ

□2章 星船にて
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宇宙、星の海のどこか。


春雨本拠船の提督室。


神威提督は、まだ提督になってから数週間しか経って居ないにも関わらず、

春雨を以前のアホ提督以上に危険な海賊へと成長させていた。


「ふー。退屈だ…。」


しかし、強さを求める神威の性質に見合うような強敵は、あの銀髪の侍と、高杉以外に見付けていなかった。


「そんなこと言ってないで団長、こっちの書類の山を片付けて欲しいんだが。」


「そんなこと言ったって阿伏兎。
退屈なものは退屈なんだ。
あーあ、どこかに宇宙最強生物の話とか出ないかなー。」


阿伏兎は縁起でもねぇ、と思ったが、表情に出すだけに留めた。


しかし、阿伏兎はとある星の近況を記してある書類に何となく目が止まり、
冷や汗をかいた。


「ん?どうしたんだい?」


神威は何の気なしに聞く。


「………オイ、二年前の石を覚えてるか?」


「二年前?誰か強い奴でも居たっけ?」


きれいさっぱり忘れているバカ提督。


「お前さんが宇宙の彼方に蹴っ飛ばしたあの石だよスットコドッコイ!」


「……ああ!」

ぽん、と神威は手を叩く。
ようやく、思い出したのだ。


「で、あんな古い話がどうかした?」


阿伏兎は面倒くさそうに説明する。


「恐らく、地球に流れ着いてやがる。」


「あの侍の星?すごい確率だ。」


しかし、神威本人は飄々としたまま、表情を変える事もない。
精神の安定において、この男の右に出るものは居なさそうだ。


「あの時、俺は説明し忘れてたが…。
あの石が本気出せば、星ひとつ丸ごと氷漬けにできる代物だ。」


「氷漬けってことは…?」


「その星の生物は、ひとつ残らず根絶やしになるのは目に見えてるってことだ。
誰かさんが蹴っ飛ばしたせいでな。」


阿伏兎はその「誰かさん」をじろりと見る。
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