ゆきうさぎ

□序章 約二年前
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ここは、地球からはそう遠くないとある無人星。

この星における太陽は、今は姿を見せてはいない。
なぜなら、分厚い灰色の雲が空を覆ってしまっているからだ。

土は無く、足場は氷と雪で覆われていた。


「で、ここまで来といてそれが目的?」


固い氷の地面に立った少年はそう呟いた。


男の名前は神威。


宇宙で最も危険とされる宇宙海賊春雨所属する。


若冠16歳。
それに見合った見た目と、見合わない残虐さを秘めていた。


隣に立ち、透明な小石を握る大柄な男は阿伏兎。

この二人は夜兎であり、地球人とは比べ物にならないほどの戦闘力があった。


「ああ。これだよ、これ。」


「へぇ。こんなちっぽけな石、どうやって使うんだろうね。」


「確かに、聞いた話によると…このままじゃ何の意味も成さないが…」


「よっ。」


話を聞いているのか聞いていないのか、
神威は阿伏兎から石をひったくり…


「飛んでけー。」


軽く投げ、上空へと蹴飛ばした。

ボールは友達とでも言いたそうだ。


「ああああああああああ!」


何も落ちてこない空に、阿伏兎の叫びが吸い込まれる。


元々小さな惑星だったため、
大気圏を越え、宇宙空間へといってしまったらしい。

夜兎の脚力、舐めるな。



「何やってんだこのスットコドッコイ!!
それは今回の元老の目的の品…」


「だって、このままじゃ意味が無いんだロ?」


「話は最後まで聞けぇぇぇ!」


「それに、俺はここに強い奴が居るって聞いて来たんだ。
それが、あんな小石じゃ…」


「誰が!いつ!強い奴って言ったよ!?
ちなみに俺が言ったのは『とんでもない強い力を持った伝説の石』だ!」


阿伏兎の熱弁にも、神威は飄々としていた。


「あり?紛らわしいなぁ。
まあ、でも伝説のなんちゃらとかいうものは大抵、あるかないかよくわかんないからさ、
ここは伝説は伝説でしたってことで。」


「……………。」


「それに、こんな石を欲しがる上が分からない。
楽しみにしてきたのに、興醒めだよ。」


「……そうかよ。」


阿伏兎はもう呆れて何も言うまい。






…と、いうのが二年前の宇宙の話。


今回の話の本題はこの神威少年が春雨において「提督」と呼ばれてからの話。


この二人は知らなかった。


蹴飛ばした石が意思(駄洒落じゃないけど)を持っていたことに。













小石……『雪晶石』は進む。

侍の星、地球へと確実に近づいている。









1章に続く。
 

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