作品

□満月を射て
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まだ情事の後を
鮮明に残すシーツの上で
心地よい光に目を開けた。

窓から差し込む、
夜空の中心でぼんやりと
部屋を照らす月。

俺の微かな息づかいと
満月だけの静寂の夜。


「月光さん…。」

欠落のない月を見据え
浮かされたままにその名を呼ぶ。


「何だ…?」

「あ、起きてはりました?」

返って来た声に振り向けば、
満月にその青いメッシュの髪が照らされていた。

「今日の満月、ブルームーンって言うんやって、月光さん?」


「月に二度目の満月、だな。」

ひとつきに二度目の満月。
ブルームーン……青い月。


「月光さんみたい、」

少しの歪みも見て取れない。
そんな月と、月光さんは何だか似てる。

手を伸ばしても、
届かない気がする。

…‥そんな領域。

目を細めて見上げていると、
俺の髪に月光さんの指が絡む。

「ブルームーン…見ると幸せになれるんやって、誰かが言ってはりました。」

月光さんが小さく息を飲む音が聞こえた。

いつだって隣にいるのに
まだ遠い、まだ遠い。

その腕の中で目を閉じて、
焼き付いて離れない今宵の満月に思いを馳せる。

満月を射て‥‥‥


貴方の核心に、届けたなら‥‥‥。

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