DEVIL SURVIVOR
□健やかな恋が育ってゆく
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そんな彼であったから、ある昼日中、件の少女天音から「週末、一緒に出かけてくださいませんか」なんてストレートに過ぎる誘いを申し入れられた時は静止を通り越して一瞬心臓が止まった。フリーズするどころか凍死した。あの天音が。翔門会の巫女様が。その身に天使と悪魔を同居させていたような彼女が。週末に人を誘って遊びに行きましょうだなんて。脳内で無駄な逃避を繰り広げてしまった月光を引き戻したのは「夜神さん」と声に不安を滲ませて見上げてくる、爆弾投下少女天音だった。
「駄目、ですか」
「いや、駄目じゃないけど」
「そうですか…」
「駄目じゃないけど、だけど、」
どうして急に?と月光がそう問うと、天音はゆっくりと、言葉を選ぶようにして唇を動かした。
「休日になると、皆さん、知人同士で街に出かけるようでしたから……」
「うん」
「それで、その……私は今まで、誰かと休日に出かけたことなんて、ありませんでした」
「……うん」
「ですから……その、」
「うん、わかった」
しぼんでゆく声と相まって、だんだんとうつむいていってしまった天音の頭をぽんぽんと撫でた。僅かに揺れた細い肩に、頑張ったなあなんてずれた感想を抱いてしまう。さすがにそこまで馬鹿正直に口に出すほど、月光は子どもではなかったけれど。