DEVIL SURVIVOR

□さよなら最愛
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携帯が鳴らせたメロディはもう久しく話していないどころか顔を見てもいない人間からの着信を示すものだった。そう頭では理解していても体は勝手に反応して、鳴り続けるそれを開いてディスプレイに表示された文字を確認してしまう。「木原篤郎」の四文字に、ため息が出た。

東京封鎖が魔王の誕生という形で解除されてから数ヶ月が経った。それはつまり、柚子が大切に思っていた人と対立し、そして呆気なくその人を失ってしまってから、それだけの月日が過ぎてしまったということ。幼なじみの犯した凶行を止めるどころか言葉の一つを届けることすら叶わず、挙げ句見逃されるという形で迎えた敗北はただただ悲しくて。つまるところ全ては遅すぎたのだという現実が淡白に彼女に突き付けられた。
疲労と心労で痺れた思考の中であっても、抜けてしまった穴は目を背けるには大き過ぎて、じくじくと柚子を苛んだ。心の穴は、ぽっかりとなんて空いてくれない。痛々しく生々しく、肉々しく憎々しく痛み続ける。


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