DEVIL SURVIVOR

□どれだけ救われたかなんて
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町でユズを見かけたから、身を隠して変身も解いてから声をかけたのに逃げられた。なんで?
ちょっと外の空気を吸ってくると出ていって、帰ってくるなりそう問い掛けてきた従弟兼魔王の月光に、直哉は僅かに目を細めた。


「…ユズが?」

「うん」

「…何処で会った」

「どこ…ああ、表参道の辺りだけど」

「…そうか」


COMPは破壊したし、おおよそ問題はないだろうと判断する。ユズ――谷川柚子はもうただの人間、悪魔使いにはなり得ない一般人であるし、そもそも仮に全人類が結託して月光を襲撃したとしても、それは徒労に終わるだろう。絶滅危惧種に新しくホモサピエンスが追加されるだけだ。
考えるまでもなかったなと胸の内で呟いていると、なんとも微妙な表情を浮かべた海色の瞳と目が合った。


「ナオヤ、俺の話聞いてた?」

「ん…ああ、上手く姿を変えられるようになったのか。偉いな」

「聞いてたのはそこか…」


魔王としての覚醒を迎えた月光の力は日に日に増し、COMPを用いない悪魔召喚や魔界への訪問、人間の言語を超えた悪魔達との意志疎通など、"悪魔らしい"技術をどんどんと使えるようになっていた。なかでも変身能力はわりと最近覚えたものらしく、適当に召喚した悪魔に手解きを頼んでいたのを直哉は知っている。見た目はどうやっても高校生な月光に、懇切丁寧に変身を教える悪魔数体という絵面はなんとも愉快なものだった。そうして人間に"化ける"ことを覚えた従弟は、ヒルズから外に出かけるようになったのだ。

この姿のままだとゆっくり散歩も出来ない、一度そう愚痴りながら帰った月光の服には返り血がぽつぽつと模様を浮かべていた。街中で思い切り鉄パイプを振り下ろされたから、殺した。おかげでとんぼ返りするはめになったよとぶつぶつ言っている月光にカイドーは腹を抱えて爆笑し、篤郎と、偶然その日ヒルズを訪問していた麻里は怪我はないかと心配そうだった。直哉はただ、笑みを深くして弟を見つめていた。

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