DEVIL SURVIVOR

□健やかな恋が育ってゆく
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天音のまるで仮面を張り付けたようにぴくりともしなかった表情筋が日を追うごとに少しずつ緩んでいっているのを、月光は素直に喜ばしいことだと歓迎していた。嬉しさに頬を緩めることも、悲しみに眉を下げることも、一切を許されず、許さなかった彼女が、彼女なりの方法でおずおずとでも前に進もうとしている。父親や翔門会にがんじがらめになっていた天音が、そこから自分の意志で抜け出そうとしている。それが嬉しくなくてなんだろう。
ただ同時に、その変化がひどくゆっくりで、長い時間を必要とするものであるとも月光は踏んでいた。例えようもなく不器用で、悲しいほどに捻れてしまった兄、もとい従兄を一人抱えている彼からすれば、それは予測というより確信に近かった。

人は変わる。簡単ではないけれど。

だから、というわけではないけれど。月光の少女の変化に対する姿勢はわりかしのんびりとしたものだった。
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