短編

□後輩たちには譲らない
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「あぁぁーもうダメだぁぁ」
『麗(れい)ちゃんどしたの?パソコンの画面見ながら』
「れーじぃー。あんた達の後輩ヤバいよぉ」
『へ?』


先日公開された劇団シャイニング第2段のジャケットをみた私は悶絶していた。


「これだよこれ!」


私は嶺二にノートパソコンの画面を見せた。
音也くんにセシルくん、真斗くんに翔ちゃんがキメ顔でポーズをとっている。


「はぁ、本当にこの子達可愛いわぁ。良い後輩を持ったね!」


私は後輩たちが大好きだ。
色恋うんぬんではなく、後輩たちのフレッシュでやる気が満ち溢れている姿を見ると、元気を貰えるからだ。


『でも麗(れい)ちゃん、先月公開されたぼく達のジャケットの時はそんなに盛り上がってなかったじゃない?』
「あれはあれでよかったわよ。でも今回のは全員後輩たちでしょ?初々しいさがまだ抜けてないでしょ?可愛いでしょ!?」
『えぇっ!?そんな力説されても…』


そうテーブルを叩くと、藍ちゃんが鬱陶しそうにこちらを見た。


『麗(れい)。ウルサイから静かにして』
「藍ちゃんヒドイっ!」
『打ち合わせの休憩中に騒いだのはお前だろうが』
「なによ蘭丸のくせにー」
『意味わかんねーよ!』


そう、私と彼らは明日に迫ったシャイニング事務所のライブに向けての打ち合わせ中だ。

前に2回行なったライブは、彼らの後輩たちがメインだった。
しかし、今まで個人で活動していた嶺二、蘭丸、藍ちゃん、カミュの4人がカルテットナイトとして共に活動するようになり、今回はST☆RISHと共にライブをすることになったのだ。


「あ、そう言えば前回のライブの時はカミュだけゲスト参加してたよね?楽しかった?楽しかったよね?後輩くんたち可愛いもんねぇ」
『ふん。仕事だからやったまでた』
「へー、ふーん、そぅ」
『…なんだ?言いたいことがあるならハッキリと言え』
「んー?なんでもないよー?カミュがツンデレなのは通常装備だもんね。大丈夫、私ちゃんとわかってる」
『貴様…っ!』
『カミュ、止めときなよ。麗(れい)のペースにのまれるとムダに疲れるだけだよ』
「藍ちゃんが私に優しくない…」
『そう?いつもと変わらないと思うけど?』


まぁ、何だかんだ言っても彼らとは付き合い長いし、なかなか言えないけど尊敬もしてる。

そんな彼らの事も私は大好きだ。


『つか、明日の打ち合わせの続きしねーのか?まだ終わってねーだろうが』
「そうでした、と。けどまぁ、昨日までのリハ見てる感じだとカルナイは問題なさそうだね」
『当然であろう』
『まぁ、ボクやカミュに限って失敗やミスはありえないよ』


そう言う藍ちゃんに嶺二は抗議した。


『えぇ〜っ!?ぼくちんだって本番で失敗はしないよ〜!』
『貴様は毎度振り付けを勝手にアレンジするなと、何度も言っているだろう!』
『全くだよ。ボクとカミュでどれだけフォローしてると思うわけ?』
『うぅ…』


二人に責められてタジタジになっている嶺二はいつものこと。
私の横で知らんフリをしていた蘭丸はそのまま明日の資料を読もうとしていた所に、藍ちゃんがすかさず指摘をする。


『ランマル。キミもだよ』
『んだよ。俺は嶺二みたいなことはしてねーだろ』
『自分の所の歌詞とはいえ、勝手に英語に変えるのやめてよね』
「あ、それは私も気になった」
『るせーよ。男はロックだろうが!なよっちぃ言葉使うより英語のがいいんだよ!』


藍ちゃんが言いたいのはそういうことじゃないと思うんだけど…。
まぁ、蘭丸がロックに拘るのは別にいいけど、使いすぎるのも如何なものかって言う理由でいつもみんなに反対されてるもんね。


「あーぁ。たまにはカルナイじゃなくて、ST☆RISHの曲書いてみたいなぁ」


なんて、思いつきで呟いた私の一言に、4人が一斉にこちらを振り向いた。


『…貴様。今、なんと言った?』
「へ?」
『ねぇ、それホンキで言ってるの?』
「あ、あれ?」


カミュや藍ちゃんは、まるで怒っているかのように私に詰め寄ってくる。


『麗(れい)ちゃんはぼく達の曲、書くのが嫌になっちゃったの?』
「ち、ちが…っ」
『アイツらには専属の作曲家の女がいるだろうが。どうする気なんだよ?』
「だ…だから…」


何故にこうなった!?
嶺二や蘭丸も私を逃がすまいと退路を塞いでいる。
に、逃げられない…っ!


「ちょ、ちょっとした冗談だよ!だからみんなして怖い顔しないで!」
『ジョーダン?』
『冗談、だと?』
『いくら麗(れい)ちゃんでも言って良いことと悪いことがあるよ?』
『お前が二度と、んな冗談が言えねーように…』
「な、何する、の…?」


すると蘭丸は私の瞳を真っ直ぐに見つめる。


『明日は最高なライブにしてやる』
「…蘭丸」
『キミの曲を歌えるのは僕たちだけだって事をしっかりとわからせないとね』
「藍、ちゃん」
『ふん。この俺が貴様の曲を歌ってやるのだからな。感謝しろ』
「カミュは相変わらず、だね」
『ぼくも君の曲が大好きなんだ。明日のライブは絶対に成功させるよ。だから見てて』
「…嶺二」





―君はぼく達の、ぼく達だけの作曲家。

だから、

後輩たちには譲らないよ―…










End♪


 

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