短編

□日差しのせい
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太陽の日差しが暖かい今日この頃。
窓際の席に座っている私にとって、昼休みの後の授業はとてもキケンだ。


「……ねむぃ」


あぁ。ダメだ。
私は机に頬杖をつき、黒板からそっと視線を外し、空いた手にはペンを持って。
よし。これで授業受けてます風に見えるだろう。
そして、そのまま目を閉じる。

この日差しがなんとも言えない心地よさ。
コレで寝るなと言う方が無理だろう。

しかし、ウトウトし始めた私の頭に何かが当たってくる。

最初は気にしていなかったが、流石に何回も当てられればイラッとしてきた。
いったいどこのドイツ人が私の眠りを妨げようとしているのか。
物が飛んでくる方を睨み付けると犯人は、


『(おい!何寝てんだよ!)』


来栖翔、だった。

ついこの間、突然教室に現れた学園長の計らいで、席替えをすることになり、彼は私の斜め後ろの席になった。

彼とはそんなに親しいつもりはないのだが、席替えをしてからというもの、事あるごとに私に話しかけてくる様になったのだが…


「(…翔?何?私、今忙しいんだけど。てか消しカス投げてこないでくんない?)」
『(忙しいって何だよ!お前今、確実に寝ようとしてただろっ)』
「(そうだけど。何か問題でも?わかってるなら邪魔しないでよね!)」

授業中の為、小声で話してはいるものの、なぜかお互いヒートアップしてしまい…。

『だから、授業中なんだから寝るなっての!!』
「うるさいなぁ!だいたいなんで翔に言われなくちゃいけないのよっ?眠たいもんは眠いんだから邪魔すんなっ!」

お互い机から立ち上がり睨み合っていると、すぐ側に人の気配を感じた。

『お前らなぁ…』
「『ひ、日向先生…』」
『俺の授業中にケンカたぁ、良い度胸だなぁ?』
「滅相もございません」
『す、すんませんっ!』
『二人とも次の授業始まるまで廊下に立ってろっ!!』












「……翔のせいだからね」
『…なんでだよ』


本当に廊下に立たされた私は、翔に文句をぶつける。


「翔が私の眠りを妨げるから、結果、日向先生に起こられたじゃん」
『いや、お前が授業中に寝んのが悪いだろっ』
「仕方ないでしょ。今日は絶好の昼寝日和だなと思ったからね」
『はぁ〜』


何よそのリアクションは!

大体、翔に邪魔されなかったらこんなことにはならなかったはずだ!


「それに何で毎回私に突っかかってくるわけ?…あ!分かった!」
『っ!』
「翔って実は私の事…」
『……』
「嫌いなんでしょ?」
『…はぁ?』
「じゃなかったら毎回私の邪魔しないよ。うん」


私は一人納得をして、うんうんと頷いた。
じゃなきゃ、私の至福の時間を邪魔される理由が思い付かない。
斜め前に座って、気持ち良さそうに寝る私が気にくわなかったのか。
なんだかそう思ったら、胸の奥がチクリと痛んだ。
…何でだ?


『……げぇよ』
「え?何?」
『だからっ!』


真剣な表情でこちらを向く翔に思わず圧倒される。


『俺はお前が嫌いなんじゃなくて…』
「じゃなくて?」
『…きなんだよ』
「翔?さっきから声小さくて何言ってるか聞こえないんだけど」
『だから俺はお前の事がす…っ』


顔を真っ赤にした翔が言おうとした言葉は、第三者の声によって遮られた。


『二人とも、何をしているんですか』
『やぁレディ。おちびちゃん』
「トキヤ!レン!」
『っ!ちび言うなっ!!』
「え?なに、もしかして授業終わってた?」
『えぇ。しかし、貴方たちは廊下に立っていても静かに出来ないんですね』
「うるさいよトキヤ。それに今、煩くしてたのは私じゃなくて…って翔。なに言おうとしてたんだっけ?」
『な、なんでもねぇよ!気にすんな!』
「あ、そ。それじゃ私は厠に行ってきますんでー」
『貴女は…。仮にも女性なんですから、厠じゃなくてお手洗いに行ってきます。くらい言えないんですか』
「はいはい。それじゃーね」


私は三人に手を振り、その場を離れた。
それにしても、翔はさっきなんて言おうとしてたんだろう…。
トキヤとレンが来たから、聞けなかったけど。


“俺はお前が嫌いなんじゃなくて…”
“だから俺はお前の事がす…っ”


あんな真剣な表情の翔は初めてかも。
な、なんか思い出したら顔が熱くなってきた。
日差しに当たり過ぎたのかな。
そうだ!そうに違いない!



熱くなった顔を冷やそうと、私は足早にトイレに向かうのだった――。
















『お前ら絶対わざとだろ』
『何の事でしょう』
『彼女の事を気に入ってるのは、おちびちゃんだけじゃないってことかな』






End♪

 

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