短編

□それでも好きだから
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最近、好きなヤツができた。
そいつは俺のパートナーである皇(すめらぎ)麗(れい)。
身長は…俺より5センチでかい。
が。まぁ、そこは魔法の底上げブーツを履けばどうにかなるとして…。

麗(れい)は見た目も可愛い。
髪は赤茶色のセミロング。
だけど、いつもポニーテールかワニクリップで結い上げている。
身体のラインも太過ぎず、細すぎず。うなじのラインも綺麗で…ってどんだけ観察してるんだよ俺はっ!
でも本当にアイドルコースじゃないのが不思議なくらいだ。
勿論、見た目だけじゃなくて作曲のセンスもある。
得意楽器はピアノ。
あのセンスはどうやって得たのか。前に聞いてみたら、ほとんど独学で弾いてたらしい。ちゃんと習ったのも学園に入るために勉強した位だって言うし。
麗(れい)は俺がこんな曲を歌ってみたいって伝えると、ほぼイメージ通りに作曲してくれる。
何気なしに“俺とお前の相性ってイイのかもな!"って言ったら“翔くん一緒に居るといつもわくわくドキドキして曲のイメージがすぐに沸くんだ!”と眩しいくらいの笑顔で言われた。
そんな顔で、そんなことを言われたら意識しないなんて無理だろ?

それからだ。
気がついたら俺は麗(れい)のことを目で追うようになった。

意識するようになって気がついたことがある。
今までは気にしたことがなかったんだけど、麗(れい)は週に2、3回挙動不審になる日があるんだ。
そういう日に限って“ごめん翔くん!今日の練習はココまででいいかな?”と、いつもなら時間が許す限り練習をするのに、こう言うときは必ず早めに切り上げるんだ。
ソワソワしてるって言うか、兎に角落ち着かない感じなんだよな。
今日もそんな感じで早めに練習を切り上げたんだけど…。
…ちょっと気になるよな?
だから麗(れい)には悪いと思ったけど、俺は後をつける事にした。

『罪悪感がないわけじゃないけど、自分のす、好きなヤツの事は気になるだろっ』

俺は自分に言い訳をしながら、気づかれないように麗(れい)との距離をとりながら後をつけた。
すると、麗(れい)が向かったのは女子寮の自分の部屋。
麗(れい)は部屋の前に着くと周りをキョロキョロと確認してから部屋の中に入っていった。

――なんだってあんなに周りを警戒してやがんだ?
見ていても麗(れい)の挙動不審の理由がわからず、俺は麗(れい)の部屋の前でウロウロしている。
この時間は殆どのヤツが練習をしているから、寮には人は居ないけど。

『これじゃあ、俺のほうが挙動不審者じゃねーかよ』

かと言って、いつまでも部屋の前にいるわけにもいかないので、俺は意を決して麗(れい)の部屋のドアをノックしようとした瞬間…。

「きゃぁぁあっ!」
『麗(れい)!?』

中から麗(れい)の悲鳴のような声が聞こえて、俺はさっきの迷いなんて吹き飛ばしてドアを開けた。

『おい麗(れい)!大丈夫かっ!?』
「えっ?翔くん??」

部屋に入れば、ソファーに座っていた麗(れい)がキョトンとした表情で俺を見上げる。

『あ、あれ?お前今、悲鳴上げて…』
「悲鳴?…あっ!!」

ソファーから立ち上がった麗(れい)は、急に身の周りの片づけをし始める。

「あっ。あの翔くん!えっ?えっとー。あれ?なんでココに??」
『なんでって…。あれ?お前、ここにもなんか落ちてるぞ?』

俺はソファーの足元に落ちていた本を拾い上げる。何気なく表紙を見てみるとそこに…。

「あーっ!翔くんっそれに触らな…っ」
『……“へたれワンコ攻め×強気受け特集”?』
「……あー」

なん、だ。これ…。
本の表紙に載ってる男が二人。普通じゃありえない体勢で、しかも半裸のような格好で…。

「そ、それはなんと言いますか」
『お前、こういうの好き…なのか?』
「っ!!」

そういうと麗(れい)は顔を真っ赤にさせた後、深く俯いてしまった。

「ご、ごめんね。気持ち悪いよね。でも、実はアニメとかマンガも昔から好きで。アニメの影響で上○さんって人に憧れて作曲家になりたくて…」

普段の麗(れい)とはなんだがイメージが違って、たくさんのことを早口で話してくれる。
確かに俺も色々と戸惑っているし、正直まだよくわからないけど――。

「そうしたら何故か違う方向にもハマっちゃって。今日とかも見たいアニメをどうしてもリアルタイムで見たくて。いつも翔くんに黙ってたんだけど」
『…そっか』
「な、なんかこんなのでごめん。嫌、だよね。しかもこんな理由で練習もサボって…。その、私、翔くんとパ…パートナー解消したほうが…」
黙って話を聞いていたら、なにやら話があらぬ方向に言ってしまっている。
俺は麗(れい)を落ち着かせようと一歩近づく。
すると麗(れい)は俺と距離をとるように、同じように一歩後ろにさがる。

『麗(れい)…。何で離れんだよ』
「だって。こんなの翔くんに知られちゃったし、私どうやって顔合わせたら…」
『俺は』

こんな状況で言うのはずるいかもしんねーけど。

『俺は、どんな麗(れい)でも…す、好きだ』
「え?」
『アニメの事とかお前が好きなものに関してまだよく知らねーけどさ。お前はお前だろ』
「翔くん…」
『だから、お前がよかったらその…お、俺と付き合ってくれ!!』
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