短編

□誰よりも君を想う
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私は今、大変困った状況に陥っています。

『麗(れい)ーっ!好きだよ!大好き!愛してるっ』
「…え?音也、どうしたの?」
『麗(れい)、愛している』
「真斗くんも…?」
『麗(れい)ちゃん!僕も大好きです!』
「あ、ありがとう?」
『私も世界で一番、誰よりも貴女のことを想っています』
「え、そんなに!?」
『レディ。君の瞳はどうしてそんな潤んでいるんだい?そんな瞳で見つめられたら俺はっ…!』
「あ。それはさっき欠伸をしてただけなんで」
『お、俺だってお前のこと、あ、愛してっ』
「まさかの翔ちゃんも?とゆーか皆どうしたの?大丈夫?何か変なものでも食べた?」

今日はシャイニング事務所で次の新曲の打ち合わせをしていたはず…。
ちなみに私はこのST☆RISHの作曲家だ。
世を騒がす超絶イケメンユニットのST☆RISHの皆さんが、何故揃いも揃ってご乱心召されたのか。
学園に居たときも、卒業し共にデビューを果たしてから現在に至るまで、こんな恋愛フラグは立ってなかったはずなのに…。

「ね、ねぇ。みんなの気持ちは嬉しいんだけどさ、それはあれだよね。ST☆RISHの仲間として私のこと好きだよーって言ってくれているんだよね?」
『え?違うよー』
『私達の気持ちがそんなものな訳がないじゃないですか』

出来るならそんなものであってほしかったのですが…。

『あぁ。そんな生半可な想いをお前に伝えるはずがなかろう』
『まぁ、レディが気がつかなかったのも無理はないさ。だって今まで俺たちはお互いを牽制しながら、誰も抜け駆けをしないようにしてたんだからね』

なんだそりゃ。全く気がつきませんでしたよ。てか、恋愛禁止は何処にいった?

『でも麗(れい)ちゃんがいけないんですよー?』
「え?なんで?」
『なんでってお前、俺たちが居るってーのに他の男がイイとか言うから…』
「はぁ?私がいつそんなこと…」
『おやレディ。忘れてしまったのかい?』
『つい先日、お前は俺たちの前で言っていたではないか』
「へ?」
『事務所のテレビを観ながら、今話題の人気俳優“佐○健”のような人が彼氏だったらいいのにーと。貴女がそう仰ったんですよ』
「い、言った…かな?」
『言ったよー!だから俺たち、他のヤツに麗(れい)が取られるくらいならってさ』
『そうです!なので僕たちはこうやって麗(れい)ちゃんに選んでもらうために、愛の告白をしていたんです!』
『…なぁ。お前は俺たちの中で誰が良いんだ?』

だからどうしてそうなった。
在学中からまさかの展開だが、皆が私のことを想っててくれたことは理解った。
しかし、なぜそこから今の状況になる必要があるのか…。

「あのね。確かに私はそう言ったかもしれないけど“○藤健”くんのことはただのファンとして好きなだけであって、間違ってもお付き合いが出来るなんて思ってないですよ?」
『いえ。だとしても貴女が私達以外のファンになる必要もありません』
「え。なにその絶対王政ばりの発言」
『じゃあ麗(れい)は俺たちのこと嫌いなの?』
「うっ」

音也のこのわんこの様な、それでいて雨の中置いてかれた切ない表情には前から弱いのにっ!
は!もしかして私がこれに弱いの知ってて前からやっていたのか!?

『麗(れい)。お前が俺を選んでくれるのなら、必ずや幸せにすると誓おう。望むもの全てを与えよう』
「いや、そこまでは必要ないかなー」

私は欲しいものは自分の手で手に入れたい主義なので。

『おい聖川。そんなことでレディが満足すると思っているのかい?』
『それでは貴様はどうするというのだ』
『レディを幸せにするのは当たり前。望むものを与えるのもだ。俺は君だけに毎日愛の言葉を囁くよ。俺の頭のてっぺんから足のつめの先まで全てが君のものさ』
「んー。なんていうか逆にそこまではいらないかな。だってレンはレンだけのものでしょう?」

それに愛の言葉を私にだけって、それじゃアイドルできないだろ!

『レディは無欲なんだね。他のレディ達は俺を欲しがるのに』
「そうでしょうねー」
『僕はね!麗(れい)ちゃんの為だけにお菓子やお料理を作ります!翔ちゃんが欲しがってもあげません!』
『俺は一度だって欲しがったことはねぇーよ!!』
「いや、なっちゃん。私もそれはちょーっとご遠慮したいかなー。ははは…」
『皆さん。全くもって麗(れい)のことをわかっていませんね』

そういうお前は何を知ってるって言うんだ。

『私は麗(れい)の為に毎日栄養バランスの整ったご飯を用意します。私が作れないときはレシピを置いておきますので。さらに貴女にあった運動メニューも考えましょう。あまり凝ったメニューだと長続きしませんからね。健康第一。作曲家とはいえ身体が資本です。次に…』
「ストップストーップ!トキヤは私の栄養士か!トレーナーかっ!」
『貴女の為を思えばこそです』
「そんな彼氏は嫌です」
『なっ!!』

そんな心底ショックを受けた顔をしなくても。
てか、彼氏になった人に健康管理してもらうとか嫌でしょ。

『俺は、他のヤツみたいに何かすごいことが出来るわけじゃねーけど…』
「ん?」
『お前を好きな気持ちは誰にも負けねぇ!ぜってー大事にするし、お前を悲しませることもしない!』
「翔ちゃん…」

そこまで本気に想っててくれてたとは…。
顔真っ赤にさせて言われると、なんだかこっちも恥ずかしくなるなー。
しかし、金や地位で物を言わせたり、殺人的な料理を食べさせようとしたり、よくわからない健康法を押し付けてきたりする輩とは全然違うね!

『翔ずるーい!俺だって麗(れい)のことほんっとうに大好きだよ!俺は麗(れい)と楽しいことも辛いことも一緒に経験したい。苦楽を共にしたいっていうの?それだけ俺は麗(れい)のこと大事だし、一緒に居たいよ?」

お、音也もなかなか…っ。
くーっ!私の中では断然、翔ちゃんか音也だね!
二人ともなんて純粋なんだ。そんな人たちが私をなぜ好きになったのか…。
…ん??

「今更気づいたんだけど、何で皆はそこまで私のこと好きでいてくれてるの?」

ココは好意を寄せられている側として気にするべきだろう。
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