謙光

□ペンダントを君に。
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「謙也さん、今いいですか。」


廊下から教室を覗く。
「なんや?」


眠そうな体を起こし、廊下に出てきてくれる。



「えーっと…、」


さっきからポケットに入れた手が熱い。

手の中にはペンダント。
謙也さんとわかれたあとに一人で買いに行ったものだ。



謙也さんが欲しいと言ったから、プレゼントに。




それなのに渡せなくて渡せなくて、
もうすぐ五日経つ。


(あほか俺…。)




「光?」


「これ!謙也さん欲しい言うとったやないですか!」




謙也さんの顔が見れない。
今どんな顔してるだろう。

呆れ?

それともまた「嫌や!」って言うかな。




「…俺のために?」


ぼそっと聞こえた声に顔をあげる。

口元をおさえて、耳まで真っ赤。



(かわええ…。)

「あかん、嬉しすぎる。」



「欲しい言うとったから…、」





ぐっと引き寄せられて、
「ほんま好きや…。」


なんの飾りもない愛。
照れくさい愛。




(うわ…べたぼれや…。)











「そのペンダントよかったんか。」
昼休みの屋上。
白石と二人で校庭を眺める。

「せっかく光がくれたんやもん。」
「せやけどほんまは謙也が光に似合いそうやから…、」



「ええねん。」


(なんつーべたぼれ具合や…。)

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