謙光

□touch
1ページ/1ページ

「光!好きや!」


疑ってしまう。



謙也さんはそんなこと言うくせに
俺に触れようとしない。



「光?」




「謙也さん…。」


触るのはいつも俺から。
手をとり、引き寄せて抱き締める。



けど、そんなことをしたって
謙也さんは冷静で。




「どないしたん?」

「……好きやねん。」






俺はこんなにも貴方を好きで
触りたくてもがいてるのに。



温度差が哀しい。




「光?」



心配なんかしなくていい。

だから俺と同じくらい、
好きになって。




「光、どないしたん?」

「謙也さんは俺のこと好きとちゃうんですか?」





「好きに決まっとるやん…。」

またいつものように簡単に言う。




「せやかて、俺のこと触らへん…。」



俺がそう言うと、強く抱き締められた。



「光は、好きってあんまし言わんから不安やった!」



ぎゅっと力がこもる。


「せやけど…おおきに!言うてくれてめっちゃ嬉しいわ!」







「……謙也さん。」


「お前に触らんのはな、止まらなくなるのがこわいからやねん。」




恥ずかしそうに言うのでこっちまで恥ずかしくて。


ただ、君が好きだから。



それだけで、
それだけなのに、
どこかでかけ違えた。




「不安にさせてもうたな、すまん!」




一旦ほどいて、もう一度かけ直そう。





ただ、君が好きだから。






「……ちゅー、してもええ?」

何も言わずに頷く。
すぐ近くの息づかい。




「好きやで。」

初めて謙也さんから触れられた。
ちょっと不器用で甘いキス。






「あかん。もっと好きになってしもた。」



「……俺もや…。」






そう言って、また笑って
もう一度キスを落とした。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ