謙光

□1日。
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時々、わからなくなる。



謙也さんが俺のこと好きなのか。
とても不安になって、押し潰されて。

見えなくなって、消えずに残る。






「謙也さん。」


「なんや?」




名前を呼んだら振り向いて微笑んで。

でもその笑顔は俺だけのものじゃない。




たとえばそれは貴方の象徴で。
たとえばそれは貴方の涙で。



ふわふわの金髪を揺らして。




「今日、何の日かわかります?」


たとえば困らせようとした質問にも


「光と一緒におる、特別な1日や。」


なんて恥ずかしいこと言って。





意図的なのか、
よくわからない。



「謙也さん。」

「光のこと好きやで。
わかっとるやろ?」




先手打たれて何も言えなくなって。





俺はこの人にいろいろもらってて、
その分何も返せなくて。



余裕がある貴方とは大違いなんです。






余裕がほしい。





「なぁ、光は?」

「え?」





「光は俺のこと好きなん?」

「……。」



余裕ないような目で見つめるから
思わず目をそらして。



「ぜんざいの次くらいには好きっすわ。」



「おおきに!」




ほんとに嬉しそうに笑うから。




こんな些細な日常が大事だと思えるんだ。





貴方は今日を

光と一緒におる、特別な1日

そう言うなら





俺は今日を
謙也さんとおる、特別な1日
としよう。





今日はなんでもない、1日。



貴方といる、1日。

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