謙光

□抱き締めよう、それから。
1ページ/1ページ



今日こそ言う。
今日こそ言わな。

あかんねやろ?
せやかて、うまく言えへんねん。




…―好きやから。









「話ってなんやねん、謙也さん。」

「ため口かい。」



とりあえず、部活前呼び出した。





この関係を終わらせたくて。

事が事なだけに
なかなか動き出せない。



「あんな、」

瞳がこちらを向く。


目と目が合うと
どうしても言えなくなる。




好きやねん。


―その言葉が。





「ねぇ、謙也さん。
俺も、

…話したいことあるんやわ。」




初めて会うた時を思いだそう。
きっとふたりお互いに
こいつ、なんか嫌なヤツ

そう思っただろう。






「よう聞いとってください。」


真剣な瞳に
熱を持った頬に、


染み出して。






「好きですわ。」


そんな簡単な言葉を残した。










「はッ…?」


「謙也さんの、話。」
「え、」


「話があったんやないんですか。」





見つめられると言えない。

言おうと思ってた言葉が
宙に舞う。





「………ほな、行きますわ。」


歩き出して、
思わず手をとる。




「好きや。」



うまく言えたかもわからん。

ただ、伝えたくて。



「好きやねん。」




止まった関係を動かすために。









その手を体に引き寄せた。





「俺の恋人になってくれ。」


「……ま、しゃーないっすわ…。」









抱き締めよう、
それから―……

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ