謙光

□ミミザワリ
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「本当、謙也さんって
アホや。」

「財前の言うことも
よぅわかるで。

せやけど
あいつもイイトコ
たくさんあるやんか。」

「部長は同じクラスやから
いいですわ。」




……………なんやこれ。


俺のこと褒めとんのか?
けなしとんのか?

わかりにくいわ。




なんや、ほんま。




部室入れないやんか。


ちゅーか
俺の可愛い光と
何楽しく話しとんのや!


ムカつくわ…。





「だいたい、
謙也さんの声
ミミザワリなんすわ。」

「耳障り?」

「やって
……いで…みに入ってもうて、

つい
……で……てしまうんやもん……。」
白石が笑う声が聞こえた。
「なるほどなぁッ!」


「笑わんといてください!」


「しっかし
えらいちっちゃい声で
言うたなぁ、自分。」

「…放っといてください。」



白石、ナイスツッコミ!


俺も聞こえへんかったわ!

聞こえるように
話してや!





「ま、
光はなかなかの
ツンデレぶりやなぁ…。」

「謙也さんのせいっすわ。」


俺かい!!


なんでそうなんねん。



ちゅーか
早く入りたいんやけど…。


「謙也、なした?
部室入らんと…。」
「うわッ!
千歳!
しぃーッ!!」




ぎぃー。


わかっとる。
部室の鍵は古くて錆びとる。



やから
この音は部室のドアや。



「謙也、
今のは千歳のせいやないと
思うで。」


「っ、白石…。」
「アホっすわ…。」


「……財前…。」



中から二人が出てきた。


千歳は
やっと入れるばい。
と言って、
すぐに中に入った。



おいてくなッ、千歳!!


パタン。

心の叫びもむなしく
その場には三人になった。




「盗み聞きとか…
たち悪いっすわ。」

「ちゃう!!」



「あー、
俺は昇降口
行っとるな!」

「あっ、ちょ白石!!」



薄情なやっちゃ!!


「……なんすか。」
「こっちのセリフや。」



もうこの際聞いてまお!!




「俺んこと
嫌いになったん?」


「…………は。」



財前は真顔で
髪をくしゃっと
いじった。


「聞いとったんやないんですか?」

「聞いとったで!!


せやから
言うてん。」



「俺、
嫌いなんて
言ってません。」


「ほんまか!?」



よかったー、と
息を吐くと

財前に笑われた。



「ほんまっ…

アホっすわ…!」

「なんやねん、
だって耳障りって…。」



そう言うと
財前は目を大きく開いて
また
ふっと笑った。



「財前って言ってみてください。」


「……財前?」


「ほらね。」




いや、ワケわからん!!




一人でぐるぐる
考えてみる。


やっぱわからん!


そう思ってたら
財前が抱きしめてきた。





「ほんま…、
耳触りよくて
困るんです。」







―耳障り?

―やって
きれいで耳に入ってもうて、

つい
耳で追ってしまうんやもん……。








「わかりません?」




「わからん。」









「声が好きや
言うとるんです。」








―耳で追ってしまうんやもん……。

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