弟俺
□お菓子じゃなくて。
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10月31日。
無条件にお菓子をもらえる日。
俺は世史がクッキーを食べているのを見て、近寄る。
「世史、ちょーだい!」
「……俺のだ、ばーか。」
一蹴されてもめげない。
「けちー。」
「ケチで結構。」
あ、と思い付いて試しに言ってみる。
「trick or treat!」
「…………。」
何もなかったかのように世史はクッキーを食う。
「くれなかったらイタズラだぞ!?」
「………じゃあ、」
世史はようやくこっちを向いた。
そして手のひらを俺に向けて出す。
「trick or treat?」
「えっ…。」
「………わかっただろ?」
世史はクッキー全部を俺に渡した。
そしてあっちへ行け、と手を振る。
「バカなやつ。」