弟俺

□think about love , so, love
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べたつく汗。
練習着の泥。


「もう遅いよ。
あがりな。」



―それすらキレイで。





「十堂さん。」



そんなこと言っても
まだ8時。


いつもなら
10時まで待ってくれるのに。





「今日は寄りたいところがあるんだ。」


「はぁ…。」



素直に返事するのも
気が引けたので
目一杯ゆっくり着替えた。


「どこ行くんですか?」


「ナイショ。」




イタズラに。

どこに向かう?




「ここ…。」

「……山?」



連れてこられたのは
少し遠い灯台。




「後ろ、見てみな。」

言われた通り
後ろを見ると、




「………すげぇ…。」



海に映る
何万もの宝石。


そして、
空の海月。


「凄いだろう?」


ニッと笑うコイツを
不覚にも

可愛いとか思って。




「この場所、
最初にお前に見せたかった。」




「あ、そ…。」

興味なさげに
返しても
見透かされる心。




「5……、4……、」


「え?」




「2…、」
「十堂さん?」




聞き返しても応答はない。


「ゼロ。」
「へ?」


ヤツは俺の目の前で
両手を広げて言った。


「It's show time!」

同時に海の色が赤くなった。

さっきより、
もっとライトが映える。



かと思ったら
次は黄色に、緑に、
色とりどりに変化した。





「灯台をね、」
「は?」


こっちを見て微笑んだ。



「この時期だけライトアップしてるんだ。」




どう返答すればいいか
わからなかった。



「お前に見せたくてさ。」





…………くそ。

カッコいいじゃねぇか。




「かっ、勝手に連れてきたんだから
礼は言わねぇからな!!」

「いいよ。」


思い切り笑ってるようだった。



「喜ぶ顔が見たかっただけなんだからさ。」




「………ばか。」





いつもの2時間分、
得をしたのかもしれない。




いや、

得をしたんだ。





「おう、」
「ん?」








「ありがと……、な。
一応!」

「………はいはい。」




この感情の置き場。

見つけたかもしれない。


心の中に。
しっかりと刻んで。

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