弟俺
□For you？
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嶋孝一。
―オレは前からヤツが嫌いだった。
もちろん理由はある。
何一つ勝てなかったこと。
そしてもう１つ。
「世史！」
―こいつをかっこよくピッチングさせるトコ。
だから嫌いだ。
「どうした？」
今はオレのリード。
だから、怖かった。
戦うことが。
何度も立ち尽くして
後ろを向いて、
目を閉じる。
「今の兄貴をオレは生かせてんのか？」
「……世史？」
「生かせてねぇよな。」
孝一みたいなリードが
できない。
孝一のマネをしたいわけじゃない。
わかってる。
「オレはかっこよくできねぇ。」
お前を。
投間一矢を。
「世史さぁ、
何悩んでるか知らないけど
オレはいつでもカッコいいだろっ!!」
………うん。
そう言うと思った。
それで
そういうお前が好きなんだ。
「オレちゃんはカッコいいんだよ。」
「………そうかもな。」
「おっ、反抗期卒業？」
「黙れ。」
「いってぇー！」
今はもう
悩んだりしない。
迷いのない、
リードを。
―お前のために。