弟俺

□バレバレだよ、可愛いヤツめ
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「やだぁっ!
雨降ってるじゃん!」


その女子が明らかに
オレの手を見て
言っていた。

んでもッて
知ってた。




この子
隣のクラスの
俺のこと好きとか
言ってる子だよなぁ?

相合い傘…うーん。





「なぁなぁ世史!!

……ってわけなんだけど
どう思う?」

「……傘やれば。

つか
いちいちオレに聞くな!」

わざわざ聞きに行くと
これまた可愛い反応。



あーあ。
いつになったら
素直になってくれるんだか。



「ねぇ!
この傘使いなよ!」

オレはさっきの子に言う。


「えっでも…。」


世史の中にはきっと
相合い傘って選択肢もあった。
それなのに
傘渡せってことは―



ぴかーん!
ヤキモチだなッ!




「ふははは!

可愛い弟だな!」

「何高笑いしてんだ。」




軽く流されても
オレはめげないぞ!!




世史の右手に握られた、
傘。


少し照れた顔。




俯いてても
ここからなら
バレバレなんだよ。

見たか、身長差を!!




「世史〜
傘忘れたからいれて〜。」


「……濡れて帰れ。」


「大会控えたエースピッチャーなんだけど〜。」





こう言えば
動き出した世史の手が
ぴくりと揺れて。

風とともに
雨を運んでいく。





「………早く帰るぞ。」


ぼそって
つぶやいたそれが可愛くて


「えっ
なに!?」


とか聞き返してみたけど
反応はなし。




ま、
それでも
オレちゃんには
わかっちゃうんだけどね。




さっきまで

右で握られていた傘を持ち変えてたり

大きい体が入りきらないのに左側のスペースが空いてたり。





うん。


俺の肩の為だろ?

……可愛いヤツめ。





「かえんのか、
かえんねぇのか!」

「あぁあぁあ、
帰るって!!」





そんでもって
いつもより
窮屈そうなのは


オレが濡れにくいように
低くさしてるからだよな。





「さんきゅ!」

「ったりめぇだ。」
「珍しく素直。」


バコッ。



「ってぇー!」
「余計なこと言うな!!」






あ。


うん、
それで

怒ってるみたいに
そっぽ向くのは









赤くなってる顔、
見られたくないからだろ?

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