島準
□時々、たまに
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たまに、
すごく悲しくなる。
「準太。」
そう呼ぶ慎吾さんの声。
たまに、悲しくなる。
イヤフォンがビビットピンク、
──どこかの女の人にもらったんだろう──
甘ったるい目、
──俺だけを見て欲しい──
移り気な思い、
──留まることを知らない──
その全てが悲しくなる。
「準太?」
今そう言って口に入れるチョコも貰い物。
そんなことを思いながら。
「慎吾さん、」
名前を呼んだ。
「どうした?」
心配そうに聞いてくる声色を素直に受け止められない。
「俺はあなただけが好きなのに…。」
思わずこぼしてしまって、
慎吾さんは唖然。
「おい、準…、」
「なんでもないっすから!!」
慌てて走り出す。
「おい待てって。」
すぐに追いつかれたら合わせる顔もなくて。
「…こっち見ろ。」
「嫌です。」
無理やり、
キスをされた。
「俺のこと、見ろ。」
強い眼差し。
体を引き寄せる力。
鼓動。
わかっていたはずなのに。
「俺はお前に恋してる。」
「…知ってます。」
そう言うとより一層力が入った。
時々、悲しくなるんだ。
この手がいつかは離れてしまうこと。
今受け止めてしまったら、その時がつらい。
その時の悲しみを知ってるからなんだ。
「俺が呼ぶ名前は、準太だけでいい。」
だから、こんなにも愛おしくて
悲しいんだ。