島準

□明日には、もう。
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秘密の恋だから。



「和己ー、これあってる?」
「…お、慎吾。ん、オッケー。」


慎吾さんは、
和さんには親しげに話しかける。


野球のことも、
勉強のことも。

和さんのことも、
慎吾さんのことも。




「慎吾さんってぇ〜、
ホント和さん好きだよねぇ。」

「当たり前だろ、バカ利央。」



声かけてもらえるだけいいよ、
利央。


俺の方はまったく見ない。





これは俺のせいだ。
俺が言ったからだ。


[慎吾さんが好きです。]


後悔だけが積もっていって。




「準さん、
どーして話しかけないんだよ?」

「……話し…かけられるわけ…ねぇだろ…?」



涙を止めたくて、
言葉は出てくるのに
上手く喋れない。




「まったく。
今追いかけてみなよ。」

利央に無理やり追い出される。



「出て右ね!」

知るか!なんて
返そうかとも思ったけど
それは何か起きてからでいいや。
そう考えながら走る。



すぐ目の前に慎吾さんがいて。
後ろ姿に声をかける。





「慎吾さん!」


距離が縮まっていく。
振り返る。


「あの………その顔、どーしました?」




赤い顔。
らしくない可愛らしい顔。




「俺だって、
意識しちゃうんだよ!」




そう言って、急接近。

あれ?
抱き締められてる。



「これで俺の顔見れねぇだろ。」

「慎吾さん、あの…。」



もしかして
嫌われたわけじゃなく…?





「追いかけてくるとか
俺、幸せ者…。」


この温もり。
感触。

夢じゃない。





「じゃ、また明日な。」

「はい。」



離れてにっこり微笑んだ。







後ろ姿を見送るのがこんなに
嬉しいなんて。

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