ハルアベ

□小悪魔の反撃
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俺が隆也に惚れたのはもうずっと前。
中学の時からずっと。

それなのに、今のこいつったら。
「なんで家にいるんすか。」
こんな調子だ。


「おばさんに言ったら部屋で待ってていいって言われた。」

「ったく。」



今日は武蔵野の練習が早上がり。
終わってすぐに家に帰って
そのまますぐに隆也の家に来た。

隆也はというと、
よれよれになった制服で
重そうなエナメルを部屋の隅に置いた。


「お疲れさん。」

部屋にあったおそらく中学の時の球を手で操る。
隆也はそんな俺に言いにくそうに言った。


「あの…着替えたいんですけど。」
「お?着替えれば?」


隆也の顔が驚きから
血管が浮き出そうな怒り顏に変わっていった。


「ふざけんな!帰れ!」
「そんなかっかすんなうるせーから。」


球を元にあった場所に戻すと
次は野球雑誌を手に取り、
ベッドに体を預ける。


「おい!」
「ほら、見てねーから早く着替えろよ。」


そう言うと、渋々隆也は制服を脱ぎ出した。

見ないとは言ったものの、
好きな奴の裸なんて見たくないわけない。

上半身があらわになった途端、
何かが外れた。

たまらず後ろから無抵抗な隆也を抱きしめる。


「ちょっ…、元希さん!」

「脱がしてやるよ。」


俺より小さいこいつの抵抗なんて、
ないものと同じ。
腰に回した手を、下へと持っていき
ベルトをカチャカチャと外す。

チャックを下ろして
ズボンから手を離すと
ばさっと下着姿となる。


パンツに手をかけるとさすがに隆也の抵抗が強くなる。


「脱ぐ必要ないです!」

「はあ?ここまできてお預けとか無理に決まってんだろ。」


「ざけんな!」


「ふざけてねーよ!好きなんだから仕方ねーだろ!」


そんな本音を言うと
俺の手を止めようとする両手が
少し緩み、また力がこもった。

「いつもそんなこと言って丸め込むのわかってんだよ!」

「おおそうだよ!」


隆也は動きが止まる。
その隙に俺の手はパンツを下ろす。


「ったくあんたって人は…。」

ため息をつく隆也の前をするする手が抜けていく。
俺は耳元で甘く囁く。

「でも俺は好きな奴に嘘つかねーよ?」




『ふざけてねーよ!好きなんだから仕方ねーだろ!』




隆也の顔が赤くなっていくのがわかる。
さすがに俺も照れ臭くて体を離す。


正面で向き合うとよくわかる。



こいつの可愛さ、素直さ。

「何照れてんですか。」

そう言って服を着始める。
ハーフパンツとTシャツ、
色気のない男だ。


「…お前ちゃんと俺のこと好き?」



何度か体を重ねたことはある。
だけどそこに恋人の気持ちはあったのか。


わからない。
俺の一方的な気持ちが強すぎて。



「…らしくねーこと言いますね。」


着ていた制服を軽くたたみながら言う。

「嫌いにきまってんじゃないすか。」

「…だよなぁー、」



予想通りの答えにベッドに倒れこむ。
だが、すぐに視界から天井が消えた。


隆也の前髪が額を触る。
深く、キスが落とされる。


「え…?」



隆也が離れて、
俺は起き上がる。

にやっと笑うと耳元に甘く囁いた。

「でも俺は嫌いな奴にキスしねーよ?元希さん。」


自分でも顔が火照るのがわかる。
俺、やばい。

まだまだこいつに惚れられる。



「たまには照れてください。」



あーもうかわいくないやつ。
でも、やっぱかわいい。


「隆也、好きだ。」

立ち上がると俺の方が大きい背。

女みたいなたれて大きな瞳。



「なあ、本音言えよ。
言わなきゃちゅーするぞ。」


こっちは決死の覚悟で言ったのに、
こいつは悪魔のように笑う。

「嫌いです。」
「…素直じゃねーなあ。」

「本音言わなきゃキスしてくれるんですよね?」


そう意地悪そうに笑ったこいつの耳が赤いから、
今はいいことにしよう。


目を閉じた隆也に、
深い口づけ。

隆也の両手が無意識に俺の腰に触れるから、
顎を持つ俺の手がまた熱くなった。



今のこの、
2人の熱が 心地いい。

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