ハルアベ

□嫌い
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なぁ、俺のこと嫌い?




そーやって聞こうとして、
聞けなくて
ずいぶん経つ。



答えは決まってる。
嫌いです、

そう言う。


だからこそ、聞けないんだ。




女々しい。



「隆也!」

「……なんすか。」



あからさまに嫌な顔するのは
どうして?



「……帰り道付き合えよ。」

「用事あるんで。」


わざわざ無い用事を繕うのは
どうして?





「そんなのねぇだろ?」
「……うす。」




軽く舌打ちをするのは
どうして?



……決まってる。
嫌いだからだ。




「なぁ、隆也。」




更衣室にはもう二人。

遅く着替えようと
俺はいつまでも待つのに。





「俺のこと、どう思ってる?」



「どうって…ピッチャーだと。」






間抜けな顔で
呆気なく応えて。




ちょっと堪える。
なんだ、これ。





「違うんすか。」

「……行くぞ。」




着替え終わったのを見て、
歩き出す。



慌ててついてくる。
意味わかんねぇ。


嫌いならばっくれればいいじゃん。





「なぁ、俺のこと嫌いか?」


少し寒い冬空。
暖かい風が通りすぎた、
家の間。


「嫌いに決まってるじゃないすか。」

そう言った笑顔が爽やかで。






「なんだそれ。」
そんな風に笑った。




「元希さん、案外いい人だって、



……知ってますから。」



「……そりゃどうも。」




寒い。

寒さのせいで耳が赤い。






俺も。


こいつも。




「じゃ、また明日。」

「…おう。」










答えは決まってる。

だから、
聞けないんだ。




[案外いい人だって、]





明日もまた、







[……知ってますから。]





少しずつ恋をする。

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