ハルアベ

□アンタだから仕方ない。
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あと何回、この人の球を受けられるんだろう。






そんなことを思ってからどれくらい経っただろう。


俺が元希さんを変わったと思うようにあなたもそう思っていますか。





そんなときに限って遭遇するんだ。



「隆也。」


一瞬立ち止まって顔をあげる。
目の前には少し懐かしい男の姿。





「久しぶり。」



微笑みながら言う元希さんを横目に歩き出す。

「ちょ、おい!」

慌てた様子で腕を掴まれるとおとなしく立ち止まるしかないワケで。





「久々にキャッチ付き合えよ。」
自分勝手なところも変わってなくて。



「嫌です。」

部活帰りで疲れているのに。
しかも、あんたの球なんて。



「川原でさ、いーじゃん。
ちょっとだけ。」




「嫌です。」


きっぱりと言って去る。



それでも、引き下がらないらしい。



「いーじゃねーかー。」

「嫌です。」





よりによって何故今日再会したのか。




変わった元希さんなんて見たくないのに。


ずっと。
会いたくて。






でも会いたくなくて。






元希さんの目の前に座っているのは、俺じゃない。


その真芯を捕らえるのは俺じゃない。






「ちぇっ。」


拗ねたようにカバンを持ち直す。



「なにやってんだよ、行くぞ。」



いつのまにかどこへ?
まったく、わからない人だ。







「あんまんでもおごってやるよ。」



「……いりません。」






そんなものじゃない。










「あぁ?……わぁったよ。肉まんな。」



「わかってねぇよ!」






声を荒げるとびっくりして、あ、こんな顔でも男前だなって思って。








「なにがだよ。」




黙ったまま、必死に伝われと願い。


こんなことがしたかったのか?と思い。






懐かしい日々を逃がしていく。






「言わなきゃわかんね。」



元希さんは歩き出して、少し遅く歩き出す。



俺に合わせてるのもわかる。




素直についていく気はない。






「おい?」




「元希さんが好きです。」










「あほ。」




びっくりもされないで、そんな言葉だけ受け取って。


恥ずかしくなって逆の方向へ歩き出す。






すると突然、腕を捕まれた。

かと思ったら引き寄せられて。




キスをされた、かと思えば優しく抱き締められた。







強引で優しくて。






「元希さん…?」



「もう伝わってると思ってた!」





そんな言葉を降らすから。




また俺は何も言えなくて。


思い知らされる。



「好きだよ。」










あなたに恋をしています。








「追いかけんな、もう。」


きっと前にいるのは俺じゃない。







「隣にいろ。」




そんな照れた元希さんなんて貴重だから。







「わかったな?」





ちょっと強引でも、仕方ないか。

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