ハルアベ

□birthday?
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12月11日。
今日は俺の誕生日である。


かといって学校もあれば、
練習もある。
特に変わりない毎日である。




「隆也。」


「元希さん、ちわ!!」

1つ上のピッチャーが来ると
雰囲気が変わる。
荒い気性のせいで
お世辞にも好かれてるとは
言えないのだ。


そして、
俺もその一人だった。



「キャッチ付き合え。」
「うす。」


いつも命令口調。

遠慮なんて言葉もない。



この人の速球だけが真実。



「肩の調子はどうですか?」
「別に。
いつも通り。」


パン!
パン!


軽いキャッチボールをしながら
肩をならしていく。



チョイ、と合図が出た。
座れ、という合図だ。



素直に座る。

するとすぐに構えて、投げた。
豪速球。

ずれた!!
そう気付いた時には遅かった。



頭をかすり、後ろに倒れる。




元希さんは駆け寄ったりしない。
起きなくちゃ、
そう思うのに体が動かない。


意思とは逆に
そのまま意識を失ってしまった。













白い、壁。

気付いたら保健室にいた。




隣には鞄を2つ足下に置いて
ベッドに体を投げ出し
イスに座って眠る元希さんがいた。

長いまつげ。
綺麗な顔。
透き通った肌。
漆黒の髪。

女みたいな顔立ちに
男らしい体つき。




「元希さん。」
頭が痛む。
痛みながらも肩を揺らす。

「……ん。」

目をこすりながら体を起こすと
大きなあくびをひとつ。



「寝せとけよ。」
「いや、でも肩変な風にします、
そんな寝方。」



文句を言いながらも
もう寝る気はないようだ。

「先生は…。」
「は?
ここ学校じゃねぇし。
てかシニアの借りた球場に
そんな部屋あるわけないだろ。」


じゃあこのほとんど何もない部屋はいったい、
と言いかけて口を閉じる。




「俺の家。
ついでに俺の部屋!」






怒らせてしまったようだ。
それはそうだ。

とんだ勘違いをしてしまった。




「すみません、わざわざ…。」

「別に。俺の球だし。」



珍しく反論しないので

「気にしてくれてます?」

などと言ったら
「ばーか。
調子乗んな。」

と返された。



その後、ジュースを一杯
ご馳走になり腰をあげる。


「あの、
ありがとうございました。」

「………お。」


こちらを向かないのは
照れているからかもしれない。
耳に熱が集まる。


「最近!」
「、はい?」


ドアノブに手をかけた所で
声をかけられて慌てて振り向く。


目が合う。



「上手くなってんだからよ。
……ケガしてんじゃねーぞ!」


そんな風に言われたら

「はい!!」

なんて答えちゃって




あぁもうどうしようもないな
なんて思った。










今日が誕生日で、よかった。

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