ハルアベ

□強がり
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「おっせーよ。」

部活オフで図書室で勉強していた。
7時を過ぎた頃、
帰ろうと校門を横切ると
聞き慣れた声。
振り返ると予想通り仏頂面。
「……何の用っすか。」
シニア時代の先輩・榛名元希。
「会いに来たんだよ。」
「………は?」
そう言って
停めていた自転車に手をかける。
「後ろ乗れよ。」
「…いや、いいっす。」
「いいから乗れ。」
そこまで言われると
乗らないワケにはいかない。
……ほら、一応先輩だし。
「今日練習ないんですか。」
「おー…。」
「自主トレは。」
「いつもの2倍やった。」
もう何も言うまい、
と心に決めて風に揺られる。
少しして榛名は言った。
「隆也、」
「は?」
坂に差し掛かった時、
いきなり立ちこぎし出した。
バランスを崩しながら
榛名につかまる。
「好きだーッ!!」
「ばっ、てめっ、うるっ、」
そしてのぼりきった。
素早く自転車からおりる。
俺もおりる。
「……意味わかん、」
「意味わかんねぇくれぇ好き。」
真剣に、
まっすぐに、
そんなこと言われても、
困る。
眼差しが強すぎて、
優しすぎて、
困る。
「……お前は?」
「……………。」
目を見れなくて俯く。
ガチャン。
自転車を引く音。
榛名が乗るので俺も乗る。
「あの、元希さん、」
「お前が俺のこと
ぜってぇー好きにならなくても、」
少し伸びた襟足。
風に揺られて、揺られて。
「俺はぜってぇー諦めねぇ。」
「ッ…!」
不意討ち。
一発KO。
答えなんか、
言ってやるもんか。




だから、










寂しそうな背中に腕を回して
体を預けた。


「………明日も、
迎えに来てやるよ。」



「………暇なヤツ。」









それが俺の強がり。

嫌、なんて言えないし
礼なんかもっと言えないから






「明日は部活だからおせぇっつの。」


「それでも行く。」





腕に込めた少しの力を緩めずに
また



まぶたを落とした―…

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