ハルアベ

□みえない光
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あ、



光。








雨が落ちて
甘い滴にかわる。

1滴、
また1滴。





見えなくなって
また落ちる。





「なんだよ。」


「いえ、別に…。」




元希さんにそう言えば

変なヤツ、
そう言われて。



じっとまた見て
また目が合って。


その繰り返しが
もどかしくて

今の俺には
たまらなく愛おしい。




好きです。



そんな一言が
言えずにいて。


言えなくて。



ただただ
見つめてしまう。



「元希さんは…、
野球やめたいって


思ったことありますか?」



失礼な質問なのは
わかっているつもりだった。



知っていたのに。
すべて。





「…あるよ。」

少しためらいがちに
元希さんは言った。




触れられたくないようだった。


見ればわかった。




それでも
聞かずにはいられなかった。





「どうして…
やめなかったんですか?」


「…俺が野球やめても
またやりたくなるに
決まってるんだよ。
だから
ブランクのせいで
他人にいろいろ
言われないために
やめなかったんだよ。」




いつもの
きつい口調ではあったが

どことなく暖かくて
秋丸、とかいう人の
おかげなのかもしれない。
そう思った。



そして
ちょっとだけ
悔しくなった。



「元希さん、
今好きな人いますか?」


「野球。」



真剣に返してくれるはず、
ない。




「じゃあ



俺に惚れてください。」






半分冗談だった。




半分、
アホか。
ってそう返してくれ
と思った。



「とっくに惚れてるよ。」





最近ちょっと優しくなった
眼差しと

最近ちょっときつくなった
言葉遣い。



もっと練習しろよ。
(もっと長くいたいんだ。)


バッテリーなんだから
当たり前だろ?
(もっと理解したい。)





言葉の裏に隠された
優しさと温もりに。





「付き合うとか
そーゆーんじゃねぇんだ。

ただ、
隆也ともっと


一緒にいたいだけで。」





言葉が溢れる。

溢れて、止まらない。





伝えたいのに
うまく言葉にできない。





溢れて、溢れて。




そして
消えていく。
ひとつだけ、
光を残して。




「元希さん。」


「あ?」





光が導く。

君へと導く。




「元希さんが好きです。」




微笑むあなたに
最高の兆し。




「知ってるよ。」




光です。
元希さん。



光がみえた。
そして語った。

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