ハルアベ

□わけわかんねぇ。
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「隆也?」


考えるより先に

体が動いてしまった。




きっと
榛名を嫌いなだけだ。


―それだけだ。





「いきなりちゅーしといて
ダンマリかよ。」



言い返せない。



突然
西浦にやってきて

しかも
部活帰りの俺を待って


寒い中
ずっと待ってて

俺に優しくするなんて。



[寒くねぇか?…手貸せ。]



んなこと言うから


俺はおかしくなっちまったんだ。





本心じゃねぇ。



「…すみません。
失念してました。」




「…失念?」
「はい。…それだけです。」





「嘘つけよ。」



見透かされてしまった。



あの頃と変わらない

まっすぐな瞳に。



心に。




「お前、
俺のこと好きだろ?」



顔に冷たい水を
かけられたようだった。



こういうのを

図星というのだろうか。




「んなわけねぇだろ。」
「んなわけあんだよ。

…俺がお前を
好きなんだから


お前は俺を好きじゃなきゃ

……悔しいじゃねぇかよ。」



は?


意味わかんねぇ。


「マヌケな顔。」
「……アンタが変なこと言うからだろ。」


「ふーん。」





そう言って何事もなかったように少し前を歩くんだ。


こっちは動揺しているのに。




不平等だ。






「で?」




「……は?」




榛名は俺の方を向いて


言った。




頬が少しだけ赤い。





「俺のこと、




……好きかよ。」






あまりにも直球だったから


俯いて


少し頷くしかできなかった。





それでも



すぐに伝わってきた
奴の体温が




凄く温かかった。





「もう離さねぇ。」




「元希さん…。」



久しぶりに呼んだ名前は

少し力強く





とても優しい気持ちにさせた。

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