ハイキュー!!

□流れる時の中で
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初めて好きだと言った時、
今まで見たことのないような顔をした。

どんな気持ちいいスパイクを決めた後の顔でも
仲間同士で笑い合う時の顔でも
俺に好きだと言ってくれた時の顔とも違った。


うれしいような、もどかしいような。
笑顔と言うにはあまりにもお粗末で、
おそらく木兎さんにも理解できていないようで。

「ほ、」
その言葉はおそらく「本当?」と繋がるはずで
しかし俺の顔を見て聞くべきじゃないと
気を遣ったようだった。

「冗談でこんなこと言いません」
直視できなくなった俺は、
消え入るような声で伝える。

木兎さんが初めて好きだと言ったのが
3ヶ月前。

俺はその間、猛烈なアピールを受けながら
しっかり好きだと言うことができていなかった。

ただ強引なキスに身を任せたり
充電と言って抱きしめるその温度に
安心を感じていた。

木兎さんから催促はなかった。
ただ待っていてくれていた。
この人にしたら、相当なことだ。

目の前の木兎さんは真剣な顔をして言った。
「赤葦…、俺、好きだよ」


まるで初めての告白のように俺の目を見て、
まっすぐ。

そんな木兎さんにたじろぎ、
思わず聞き返す。

「いや、知ってます…」
「ちがう」
「違うって何が」

木兎さんは俺の手を引き寄せて
ぐっと抱きしめた。
その抱きしめ方は決して優しくはなかった。

ぐっと、今までで一番
力強く、暖かく。

「いまがいちばんすき」

その声は今までの何倍もずっと優しかった。

「俺、これからもっとすきになっちゃう」
「…俺もですよ」

「ったく、覚悟しろよ」


そんな風にまたいっそう力を入れるから
思わず笑いながら
「はい」
なんて言ってしまって。


痛くない抱擁に優しさを感じて
俺も抱きしめ返した。



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