ハイキュー!!

□旭さんには
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練習試合中、西谷がコケた。

ただレシーブ中にコケたわけじゃない。
ブロックではじいたからこっちの得点だった。
当然、レシーブの連中もサーブ体制に入っているだろうと思った。


西谷が倒れていた。
一瞬で立ち上がった。

誰も不審には思わなかったろう。

西谷は立ち上がって、
「よっしゃこっから!」
と言った。



俺はその試合が終わるまで
気が気じゃなかった。

西谷がコケるなんて珍しい。
というよりほぼありえない。



「おい、西谷。」
「お疲れ様です!旭さん!」


ロングタオルを首に巻いた西谷は、
汗がひどい。


今日の練習試合が終わってもうすぐ
1時間が経つ。

ダウンも済み、そろそろ着替え始める頃。


「もしかして…足か?」
一瞬だけ、
西谷の顔が驚いて

それからすぐに俺から視線を外して

「何の話ですか?」

それだけ言った。



「大地ー!俺西谷と飯食って帰るから先行ってくれー!」
「おー!龍にも言っとくなー!」


「ちょ、旭さん!?」


「…いいから、飯行くぞ。」


少し先輩ヅラして前を歩く。

西谷は慌てて着替え出す。
終わったのを見計らって、
立ち止まる。


「お待たせしました!」

「おう。」


力なく笑うと、西谷は隣を歩き出す。


「…旭さんの言うとおりッス。」

「え?」


西谷は俺の前に立つと、
少し下を向いて
そのあと俺をしっかり見てから笑った。


「言い訳にはしません!」

「…えーと、足?」


「こないだ病院こっそり行ったんス。」


西谷はまた隣を歩き出した。

「疲労骨折寸前らしくて、」
「はあ!?」


それでよくあんだけレシーブ…。

「俺しかあげれない球をあげるのは俺しかいない。」


強く。
強く意志を持った瞳だった。

俺が何言ったって揺らがないだろう意志を。



「頼んだぞ、守護神。」

俺の胸あたりにあるその小さい守護神の頭にポンと手をのせる。


ピクッと動いて、そいつは元気よく言った。



「もちろんです!」

あ、
と付け加えたように言う。




「旭さんが気付いてくれて嬉しかったです。」

そんな言葉が照れ臭くて、
思わず頭の上の手をぐしゃぐしゃと動かした。


守護神が、笑った。
それにつられて俺も笑った。




旭 さん にはわかってしまう。

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