ハイガクラ

□太陽の季節
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夏よ逃げないでくれ。

もう少し、あなたのこと見ていたいんだ。



「風が強いですね〜。」

後ろに感じた気配に、
振り向かずに声を掛ける。

外が見えるこの場所を用意してくれたのもこの人。
誰かと話せる機会をくれたのもこの人。


「夏だからな。」

愛情を教えてくれたのも

「いらっしゃい、藍さん。」


この人だ。


「体調は良さそうだな。」


振り返って藍さんを見ると、
汗をかいていた。

夏とはいえ、このあたりは空調をきかしている。


「藍さんどうしたの?」

「走ってきた!」


少しバツが悪そうに笑う。

「ホントは仕事サボったんだ。」

「…俺なんかのために?」

「なんか、じゃないぞ。」

照れて笑う藍さんがかわいすぎる。
これはもう完全に惚れてる。


俺は我慢しきれずに藍さんを抱きしめる。
強く、離れないように。

「おい、比企…?」

好きすぎる。


「俺そろそろ仕事行か」
「もう少し、このままでいたい。」

逃げようとする藍さんをもっと強い力で閉じ込める。


行っちゃいそうな瞳、
俺に投げかけて。

それでも今だけひきとめたい。



「比企!いい加減にしないと時間が…。」

慌て出す藍さんを、
仕方なく離してあげる。

だけど。
時計など気にせずに抱きしめあえたら。

「またな、」


心潤してくれ。
もう少しこのままでいたいんだ。


きっと来たときと同じように、
振り返りもせずに走り出す。


かなわない、やるせない。

知ってる?藍さん。
俺の心は


あなたに会うときだけ時間が止まる…

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