ハイガクラ

□負と追
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「藍さん…。」


話している途中、よっぽど眠かったのか
かっくり寝てしまった藍さん。

最近、仕事ばかりして…、



「疲れてたんだね、」


きっと俺が外に出るために。


俺なんかのために。


「ありがとう。」
寝ているその頬に優しくくちづけ。

感謝と愛情。



似ているようで、
全く別の。

「ん…?あ?」

「ああ藍さん、お目覚めですか。」


そんな風にわざとらしく言う。

「すまん、いつの間にか寝ていたようだ。」


「藍さんは頑張りすぎるから。」



そう言うと小さい身体を無理に背伸びして、
俺の頭を撫でる。


「お前の痛みに比べたらこれくらい。」
「…藍さん、」


その手を取り払って、
その手を絡めとって、

唇を奪う。



吸うように求めて、
息もできないくらい。


「やめ、ろ!」
無理やり引き剥がされて、
後悔が押し寄せて。



藍さんが出て行くのを見つめるばかり。

寂しい背中を見つめるばかり。



「何やってんだー、俺。」





だって。

遠ざかっていく足音も、
俺にはオえない。

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