その他おお振り

□照れながら、君に。
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「花井〜。」
「なんだよ。」

1年9組。
放課後の教室。

向かい合わせに並べた机。
正面にこいつがいる。

別に恋人でもない。
赤点回避のために
俺がいる。




「好きだよ。」
「わかったから早くやれ。」




ん、
あれ?


今こいつ、




「へーい。」




好き
って言わなかったか?




カリカリとまた
シャーペンが動き出す。

聞き間違いか。





「あーもう
わっかんねぇよ!」

「どこ?」



ついに田島が
机から顔を離した。



「全部。」
「はぁ!?」

「冗談だよ。」



そう言ってる割に
投げ出してねぇ?




「どこがわかんねぇのかも
わかんねぇ。」

「………貸してみ。」




無造作に広げられたノートを
芯を出しながら覗く。


問題の式しか
書かれていない。




「田島ぁ…
やる気あんのか…?」

「(ぶっちゃけ)ないよ!」



悪気はない。

悪気はないのは
わかってる。





「てめっ
じゃあ何で俺に頼んだんだよ。」




「花井と二人きりに
なりたかったからだよ。」

「意味わかんね…。」


そう言っても
隣に座ってくる。




「、んで
こっち来んだよ!
やりにくいだろ!」


「花井、」
「……なんだよ。」



ため息混じりにそう言うと
田島は真面目に言い返した。




「梓。」

「は、」
「俺梓が好き。」


「冗談はやめ…、」
「本気!」





あ、



もう
そんな顔するなよ。




俺がお前に惚れてんのくらい
とっくに
気付いてんだろ?



「梓?」
「名前で呼ぶな…。」


「……わり。」
「じゃなくて。

照れんだよ!」







あーもう!!




「、」


「わかったかよ、田島。」





瞳が泳ぐ。


右、左、
下。


上目遣いで、

俺。



今さっき触れたばかりの
唇にヤツ自身の手を当てて。






「俺は田島が好きだよ。」




また泳ぐ。


下、左、右。



最後に、
俺。





「さ、続きだな。



だから
ここが2乗で、」
「花井。」



止められると思ってた。


当たり前のように。





「俺の気持ちは?」
「………知らなきゃ、
俺は何もしてなかったよ。」





「………うん。」




あ、ちょっと怒ったかも。




「俺花井が好きだよ、
やっぱり。」

「…………さんきゅ。」

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