その他おお振り

□かばん
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「好きなんだ!」


「……え?」

栄口勇人。
男、水谷文貴に


告白しました。






―逃げました。




「あっ、おい!
栄口!」


そう呼ぶ声が聞こえたけど
振り替えることができず

屋上まで走る。






「やば…。

言うつもり…なかったのに。」




これからどうしよう。

チームメイトで
友達なのに。




「はぁ…。」
「栄口!」

「うぇっ、


み、水谷…。」




いつの間にか
後ろに立っていた。


ふられる、
嫌だ。



「どこが好きなの?」

苦笑いしながら
そう言うと
髪の毛を掻き乱した。




「えっ…。





うん…、


例えば
そのまんまの水谷の
立ってる姿とか

声とか仕草が…

好きなんだと思う。」




水谷は
同じ所を何度も何度も
回って歩いて
落ち着かなくて、

俺は言った。



「もう…止まんないよ。」



きっと
大きな鞄にもこの胸にも
収まらないんじゃない?


朝の瞑想も、
授業中も、考えている。


水谷のこと。
「とりあえず、
伝えたかっただけなんだ。」




あの日から
ずっと水谷のことが
好きだったんだよ。



そんなこと
知らなくたっていいけれど
本当は知ってほしいけど…。





「栄口、」
「わかってるから!

…言わなくても。」




もう離して、許して。


「好きになってごめん。」





いつもつらい時
水谷が助けてくれたから


勘違いした。





それでも。



「俺、栄口と知り合うまで
何をして
生きてきたんだろう
って思ったよ。」



「え、
どういう意味…?」



「大好きな場所も
涼しい匂いも

揺らめく星屑も、


全部、一緒に知りたい。」


「くさっ…!」




ひたすらに
あなたの方を向いてる。


この目は永遠と。



ヤバイヤバイ。




クソレなのに。

カッコいい。





「俺、いつも
恥ずかしい程考えてた、



栄口のこと。」



恥ずかしそうに
上目遣いしないでよ。


可愛いんだよ。




「先越されたけど、


ずっと好きだったよ。」




泣いていて、
水谷は笑いながら


話すから。


ねぇ、

聞いてね。




「泣くなよ〜。」

「水谷ばかっ!」




「うん。」


「好き!」





「……うん。」



手が触れた。



「ありがとう。」


抱き合うまで
あと、

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