その他おお振り

□サボテン
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「もう泉なんか、
知らない!」


どこに行くの?
こんな雨の中。

「田島ッ!」

どんな言葉待ってるの?
今の俺じゃ
追いかけられない。


目を見つめる自信がなくて。



呼び会うように
出会ったのに。







きっかけは少しの会話。
少しの紅茶。



あの時少し残した紅茶を
勘違いして
気に入らないと
思ってしまったね。




「…んだよ…。」

雨の匂い、
冷たい風。

不機嫌な雲。


「雨か…。」

窓際の小さなサボテン。



こんな日にでも
君ときたら
水をあげてる。


溢れるくらい、
水をあげてる。

「田島?」


恋人という響きに
すべて委ねて。



顧みることもなくて、
君がここにいてくれることも
惜しみ無い愛にも
慣れていたんだね。


「わかってない、
泉はなんも!!」

どこに行くの、
こんな雨の中。
どんな言葉待ってるの?


今の俺じゃ追いかけられない。


目を見つめる自信がなくて。


呼び合うように
出会ったのに。




雨の音がザアザアと
邪魔をしている。
「くそっ…!」

君の居場所、
掻き消して。



会いたいからって
口実に誘った映画を
はしゃいでいた日々を
どうして
忘れていたんだろう。


馴れ合いの関係に
うんざりするはずさ。



どこにいるの、
こんな雨の中。


心深く濡れてしまうだろう。


窓を開けて
空を仰いだ。




「どこにいるんだよ…。」


俺の気持ち、
見つかった。


君が見せたささやかな
サイン。




「まだ、好きだよ。
今も好きだよ。




………不安にさせて

ごめん。」





見落としてしまっていたよ。






泣きそうな顔。

この時ばかりは
笑わずに。




サボテンにほら、
小さな花を咲かそう。

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