その他おお振り

□気付けよ、気付いてんだから。
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付き合いが短い。




だからこそなんだと思う。






こんなにもつらいのは―








あ。


「利央、あれ慎吾さん…。」

「迅に言われなくても
わかってるよ!!」






誰より早く見つけてんだよ。

だけど

一番最後じゃないと
話しかけらんないんだよ。




「よぉ、利央。」
「……ちわ。」

「敬意のカケラもねぇな。」

棒読みすぎて
笑ってるみたいだ。


その笑顔がまた苦しめる。


否定なんかしない。


わかってる。

「利央、先行ってる。」







あるいは
和さんみたいに
付き合いが長ければ
よかったのに。




あるいは
準さんみたいに
一緒に試合できたら
よかったのに。






俺の気持ちは一方通行で。


切なさも募るだけ。





「慎吾さん。」

「んだよ、
やけにかしこまっちゃって。」




「慎吾さんは
どうしてこの世にいるんですかね?」


「は?」

と、言った後
いつものように
ニヤニヤして続けた。



「俺の親がソユコト
したからだろ?」


「〜そーゆー意味じゃないッ!」





聞いた俺が恥ずかしくなって
口をとんがらせる。



「それとも、

俺とそゆことしたいの?」


「違いますッ!」





口をとんがらせて
歩き出してみる。




「りーおっ。」

後ろから抱きつかれた。

あぁ、もうこの人は。
何でこう無自覚なんだ?



「暑いです。」
「ったく、
先輩を敬えよ。」




先輩なんて
思いたくないんだ。


慎吾さん。





「なぁ、

利央。」




「はい?」






慎吾さんが俺の真ん前に立つ。





「いい加減気付けよ。」


あ、
またこの目だ。


心臓がうるさい。




無駄に男前なんだよ。







だから
女好きとか言われて、

損してんだよ。


わかってんのかな
この人。








わかってないだろうな。







「慎吾さんこそ
気付いてくださいよ。」



「気付いてるよ。」





「え?」

「俺は誰にでも
こんな優しくねぇよ?」



意味ありげに
にやって笑うの
やめてほしい。






頼むよ。

期待しちゃうじゃん。







「利央。



お前、
俺のこと好きだろ。」




図星。








やべ、
早くなんか言わなきゃ。






「ちっ、


違いますよ…ッ!」





「違くねぇ、
だろ?」





更に接近。




心臓注意。

やべ、顔赤い。





「なぁ、そうだろ?」




「…………。」




迫ってくるこの人は
止めらんない。



あぁ、もうカッコいい。






「何も言わなきゃ
ちゅーするよ。」




「はっ?」




「ほら。」




俺の頬に触れた手は
そのまま上にあげられ

しまいには
慎吾さんの唇が触れた。





「なっ、なっ、」


「可愛……。」




「何すんですか!」





慎吾さんは
去りかけた足を止めて

呟いた。






「俺の方が前から
意識してたよ。





それに


好きだった。」





そして
すたすた歩いてった。


















「ったく
利央のアホ!


気付けよバーカ!」






教室に戻った慎吾の顔が赤くて
からかわれたのは
また違うお話。

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