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□溺愛girl
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「ああ、ほんまにらんはかわえぇな…。」
「クスクス、ありがとう、財前くん。」
「財前くんやないやろ?
かわえぇ口で俺の名前呼んでぇや。」
「そうね、光くん?」
首をかしげて彼の名前を呼ぶと、花がほころぶように笑う。
「ほんっまにかわええ!
どうされたいんやろか、この子は!」
ギューッと後ろから私を抱きしめ、首筋に顔を埋める。
彼の髪がくすぐったい。
「くすぐったい…。」
「今、充電中やねんから。」
それは、たいそう燃費が悪いことだ。
目の端に横切っただけで、すぐに『かわいい』と連呼して抱きしめられる。
場所なんて彼には関係ないようだし。
「ねぇ、宿題、教えてくれる?」
「えぇで。
どこや?」
「この、『汝は誰そ。』ってなんて訳すの?」
「それは、『お前は誰だ。』って訳すんやで。」
古典が得意な光くんは、私によくこうして教えてくれる。
そうして、時間ができて、ふたりっきりになると彼の壊れっぷりは急激にひどくなる。
「蘭香かわええ。流石俺の彼女や。
かわええ、かわええかわええかわええ…(エンドレス)」
(私も、光くんのこと好きだよ?)
(な、何てこというんや…)
(え、まずかった?)
(あぁ、愛してるで。かわえぇぇぇぇぇ!)
クールって言われてるけど、こんなにキャラが崩れるのは、きっと溺愛girlの私だけだね。