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□能ある鷹は爪を隠す?
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財前くんは、私のクラスメートで、恋人なんです。
そんな彼にはみんなが知らない秘密もあります。
「一色、何やっとんねん。
アホとちゃうか。」
「あ、財前くん…。
ごめんね。」
一人で考え事していたら、こけそうになった。
助けてくれたけど。
「ええから、はよ帰るぞ。」
「うん。」
そう言ってどんどん前に進んでいく彼は周りから見て、無表情で、怖いのかもしれない。
でも…
「はぁ、やっと着いたわ。
ほら、ここ座れ。」
人気のない公園で、財前くんは自分の座っているベンチの横を叩く。
「ざいぜ「らん、名前でよんで?」
私の言葉を遮ったのは優しく微笑んでいる彼氏。
これが彼の秘密。
さっきと同一人物とは思えない。
「ひ、かる?//」
まだ呼び慣れていないその名を呼ぶと、彼は嬉しそうに頬を緩めた。
「ほんまかわええな、らんは。
お持ち帰りしたいくらいや。」
抱きついてくる彼にいつもの如く、私はされるがままだけれども。
愛を一生懸命伝えてくれるから。
今日こそは返そうと思って。
「…私も大好き、光!///」
驚いた様子の彼は、数秒間固まったあと、ゆっくり私に顔を近づけてきた。
目を閉じながら私は思う。
(彼の態度は素直で、)
(普段とは真逆だけど、)
(愛して欲しいと願ったあの日から、)
(もう、彼の爪からは逃れられない。)
能ある鷹は爪を隠すんだ。爪に気づかなかったのは、気づかなかったふりをしてたの私なんです。