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□どうか私に振り向いて
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私が見てるのは四天宝寺の天才、財前光くん。


クラスメートなだけで話もしないような仲だけど、彼が好きなの。





「あ、らん、また見てるの?

 財前くんはやめときなよ。」





友達がそう警告してくるが、そんなことはわかっているのだ。


だって彼にはいつも見ている人がいる。


私じゃない女の子。




「わかってるよ。

 わかってる…。」




そう言いながらもいるだなんて信じていない神様に願った。





―――――――――――――――――――――――――――


あんな会話をしてから一ヶ月。


席替えでなんと財前くんの隣をゲット。

突き刺さるのはもちろん嫉妬の視線。




「あ、確か、一色やったよな。」


「あ、うん。」



席を移動してみんながざわざわ言っている時に目が合って話しかけられた。



「まあ、一ヶ月よろしゅう。」


「こ、こちらこそ、よろしくね。」



それからは特に話すこともなく日々が過ぎていった。





―――――――――――――――――――――――――――


財前くんの隣の最後の日。


「一色、今日俺ら、日直らしいで。」



日直が回ってきた。


「あ、じゃあ掃除しなきゃね。」



そう知らされて、帰ろうと準備していた鞄を下ろす。



黙々と掃除をすること15分。

財前くんと二人きりの教室となった。



静かで、運動部の声が聞こえる。




「なあ。」


沈黙を破ったのは財前くんだった。




「な、何?」




「一色は俺に怒った事ないな。


 今日みたいに日直を帰るときに知らせても、教科書忘れても、こかしてしもても。


 なんでやねん。」




「それは…」



財前くんが好きだから。

そう言いそうになり、言葉を飲み込んだ。




「俺は、お前が好きや。」



――え?

そんな声はかすれて出なかった。


「一ヶ月前、席替えしてから、お前の隣が心地よく感じたんや。」



「私は、

 前から好きだったよ、財前くん。」



想いを振り絞るように声にする。




「…そんなん知っとる。

 あいつを見てた俺をじっと見てたのも知っとるで。」




あいつとは財前くんが見ていた女の子のことだろう。




「勘違いしとるようやな。

 言っとくけど、俺はあいつの子が好きなんとちゃうぞ。


 腐れ縁でおかんがうるさいから怪我せんように見てたんや。」




私の勘違い…

そう気がついて顔が真っ赤になる。




「そ、っか。」



「好きや。付き合ってください。」




「は、い。」




答えた瞬間抱きしめられた。





















 



(は、恥ずかしいよ、財前くん///)


(嬉しいんやから黙っとき。)


(ここ教室だし///)


(ええやん、蘭香…)


(///)








あの時、どうか私に振り向いてと願わずにはいられなかった。





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