Novel:side G.U.
□幸せの行方
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中央広場のオベリスクの前に腰掛けて、ギルドショップで品定めをしながら行きかう人々を眺める。
マク・アヌは初心者冒険者向けの街だから、人の多さは他の街の比ではない。
当然のことだが、中級・上級に
なっていくほど、冒険者の数は減る。そこまで力量の持つ冒険者は元々少ないことと、上級になれば相手にする魔物も強いことが起因する。例え、上級を自負する冒険者だろうと、上級の魔物を相手にすれば命を落とすこともザラだ。
そういう俺は、冒険者の中でも相当な手練(てだれ)に属するほうだろう。
初心者支援ギルド・カナードのマスターとして、シラバスやガスパーと一緒に初心者のサポートをしていると、冒険者はみな口を揃えて『ハセヲさんのような冒険者になりたいです』と言う。
『俺なんかじゃなく、シラバスやガスパーのような冒険者を目指せよw』
と、冗談と本気を半分にして言うのだが、彼らは再誕事件≠ナ名を馳せてしまった俺をカミサマか何かのように思っているらしい。
不快だ。
確かに俺は世界を救いたいと思った。
けど、カミサマになりたかった
わけじゃない。
そのことも、さっきのオーヴァンに対する八つ当たりに含まれていたのかもしれない。
「あの…」
そんなことを考えながら、夕方の空を眺めていると、一人の冒険者に話しかけられた。
皮鎧をまとった、比較的軽装で黒髪黒目の男冒険者。斬刀士だろうか。年齢は俺とタメか、いくつか年上といったところ。
「ハセヲさん…ですよね?死の恐怖≠フ」
「その呼び名はあんまり好きじゃねぇんだけどな」
「すっすみません!」
肝っ玉の小ささや防具の新しさを見ると、駆け出しの冒険者だろうか。こんなやり取りでビビッていたのでは、これから冒険者としてやっていく素質が危うい。
「何か用か?」
すっかり縮こまってしまっている斬刀士に話を促す。
「その…お願いがあるんですが…」
「お願い?」
「一緒にエリアに行ってもらえませんか?話はそれから…」