Novel:Side GG

□Sweet Pain
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宝石箱の内のように輝く満天の星空。濃藍の空の下は、思いの他寒い。

吸い込んだ空気の冷たさにむせかけて、カイはそう実感した。

「…新月…かな」

星の瞬きがなければ、まさに無明の闇である。人気の減った聖騎士団のテラスを歩みながら、カイは小さく呟いた。

薄着で出歩いてしまった事を後悔しつつ、自室へ向かう――が。

「――ッ…!」

視界が揺らめき、足元がふらつく。

――傷が…熱い…っ

幻の痛みか現実の痛みか。その判別もつかぬ激痛だけが脳を支配する。

「……何してんだ?」

不意に聞こえた低い声はぶっきらぼうに――しかしどこか気遣わしげにカイの耳へ届いた。

「…ソル…?」

少しずつ意識がはっきりしてくると、カイは声の主の名を呼んだ。

「ったく、何してんだ。てめぇは」

呆れ返ったように言い捨てたソ
ルの言葉に、我知らず壁にもたれ掛かっていた自分に気付く。

「…何でもない。少し、目眩がしただけだ」

よどみなく答えるが、その返答はソルの懸念に確証を与えるだけだった。
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