Novel:Side GG
□Intermezzo-Decision-
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「…懺悔か?」
カイの声が反響し終えた頃、クリフはようやく口を開いた。
「いいえ」
年齢に不相応なほど静かな声が再び響く。
「ただの独り言です」
数秒か数時間か。
聖堂の中、動かぬ空気は時間の流れすらも空虚にさせていたが、ただ静かだった。
カイは頭を垂れたまま、身じろぎ一つしない。
――カイの精神的な傷の大きさを物語る。
音にならぬ程度の息を吐き、クリフは静かに語りかける。聖騎士団の長として、部下の行動を評価する。
「お前の行動は、結果的に正しかった」
瞬間、カイの背が大きく震える。
「私はッ――!」
人を護るべき剣で、仲間を斬り捨てた。
善か悪か。良しか否か。
そんな簡便なものさしで測るべき事柄ではない。故に、カイは苦しんでいた。
いずれは、簡便で残酷なその判断を、自分で下す日が来ると、予感していたから――。
頬を涙が伝う。残酷な判断を繰り返すうちに、感覚が麻痺していくのではないかと。自分を失ってしまうのではないかと。
それが恐怖として具現化していく。
「悩んでいるのはお前が優しい子だからだ、カイ」
続いた声は、子を慈しむ親のそれと酷似していた。
「悩みがあるなら吐き出せ。悲しみは怒りに変えろ」
それは、いま、残酷な判断を下す立場にいる者の言葉だった。
そんな立場に居ながら、己を見失わずにいる者の激励だった。
告解を反響させていただけの身廊に、コツコツと硬い足音が響く。
「でなければ、戦場で生き残れはしない」
足音がゆっくり遠ざかってゆく。
初めてクリフと出会った時、彼は一太刀のもとにカイを襲ったギアを葬った。純粋に強いひとだと思った。
そして、いま。
あの時とは違う意味で、強いひとだと思った。
あの時と同じように、憧れを抱く。