Novel:side PUYO

□この手に届くもの
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ボクは  何の 為に    戦って  いるんだろう    ?



 たまに分からなくなる。

 初めの頃は、ただ、沢山の人を護りたかった。

 子供みたいに、護れると信じてた。



 だけど、現実は甘くない。



 護りたいものは、この手に余りすぎて何一つ護れない。

 戦いが始まってもう、百年以上が経った。


 失ったものは、きっと、もう、星の数にも昇るだろう。


 護る為の戦いは、いつしか失うだけの戦いになっていた。


 それでも、ボク達は――ボクととルルーとシェゾは戦い続けている。


何 の 為 に 戦 う ?


「――アルル!!」


 切羽詰った声が聞こえて、ボクは我に返った。いつの間にか俯いていた視線を上げると、目の前に黒い服に身を包んだシェゾが、ボクを庇うように立っている。

 やたら眩しく感じたのは、彼の放つ魔導障壁が淡い光を放っているから。

 月明かりをぼやかしたような淡青色を放つ魔導障壁の向こう側では、魔物がボク達を襲わんと、牙を剥いたり爪を立てたりしている。

「戦闘中にボケボケするなっ!」
「シェゾっ…ゴメン…!」

 ぼさっと突っ立っていたボクが魔物に狙われていたことは、この状況からして一目瞭然だ。

 しかし数が多い。

「アルル、呪文を!」

 魔力を消耗した状態とは言え、シェゾは魔導障壁を維持するので精一杯で、攻撃にまで手が回らない。

 ボクは黙って頷くと、呪文の詠唱を始める。とっておきの攻撃魔法の呪文。

 だけど、威力が強いと言うことは、それだけ強力な力を制御しなくてはならないということで。詠唱から発動までにタイムラグが生じる。

 ましてボクは、力の制御が上手くない。必ず成功すると言う保証もない。

 だけど――

 それでもシェゾは、ボクの力を信頼して盾になってくれている。

 ボクはただ、無心に魔法が完成した時のイメージをして、集中力を高める。風の無い穏やかな夜の筈なのに、強大な魔力が渦を巻きボクの髪や、シェゾのマントをはためかせた。
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