Novel:Side GG

□寝言
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大きな樫材の扉の前でソルは大きくため息をついた。扉の材質は素人目にも最高級のものをあしらったのだろうと予想できる。

この扉のの向こうに居るのは聖騎士団を統率する年若き団長殿だ。

彼を凌ぐ実力者ではあるものの、一介の団員に過ぎないソルがここに居るのは他でもない、繰り返し続けた命令無視の始末書を提出しにきたからだった。

――メンドくせぇ……。

弱冠16歳にして団長を務める少年、カイ=キスクとは、顔を合わせる度に言い合い(というか、一方的な小言だったが)をしている気がする。

カイの人望の厚さ故に、彼に味方する者も多い。

「……」

しかし、いつまでもこんな所に突っ立っていても仕方がない。意を決して扉をノックする。

「…?」

いつもならすぐに返事があるのだが、今回に限ってそれがない。

しばし様子を伺ってみるが、返ってくる気配もない。

「…入るぞ」

一応、断りを入れてから中へ入る。

そして少しばかり目をみはった。

「おいおい…」

思わずぼやいてしまった。

部屋の広さに比例して大きな執務卓に突っ伏す、柔らかな蜂蜜色の髪。

そっと近寄ってみると、小さな寝息が聞こえた。

「クソ真面目な団長サマがうたた寝とは…。世話ねぇな」

あえて声に出して呟く。人の気配にすら敏感なはずのカイはしかし、それでも目を覚ます気配はない。

よほど疲れているのか。

試しに頭を突いたり、頬に触れてみたりするが、起きる気配はまるで無い。
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