Novel:Side GG
□Sweet Pain
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「おい」
すい、と横を通り過ぎた少年に、ソルは声をかけた。少年が振り返ると透明感のあるターコイスブルーの瞳が、ソルの赤茶の瞳に映る。
「何だ、ソル?」
幼い身ながら聖騎士団を統べる少年―カイはソルより頭一つ分低い位置からソルを見上げた。
「お前、少し休んだらどうだ?」
屈強な兵士達と比べると、明らかに華奢な体つきの少年は連日に渡るギアとの戦闘により、負傷が多い。かく言う現在とて、絹を思わせるしなやかな金髪の隙間から包帯の白が覗く。
当人はと言えば、普段他人構う気すらないソルでさえ気にかけてしまう程、己自身に対し無頓着なのだった。
「いや、まだ残っている仕事もあるし」
「お前な…」
「今日はデスクワークだけだから…」
大丈夫だ、と付け足し微笑む。
「――大丈夫じゃ…」
大丈夫じゃねぇだろう、と言いかけた時、通路の向こうからカイを呼ぶ声がして、少年は走り去ってしまった。