Novel:side 忍

□仮面と月と
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『誰の変装をしてても、分かるよ』


 不意に蘇る、友の声。


『他の人になりきってても、三郎は三郎だし』


 そう言っては、忍術学園で並ぶ者の無いと謳われた変装を、彼はいとも容易く見抜いた。

 否、自分の変装だったから、かも知れない。

 自分以外の人間が変装していたら、彼はそれが変装だと気付くだろうか。いくら天然ボケの気質があったとはいえ、彼ほどの忍者であれば他者の変装を見抜くことは出来るだろう。

 だが、彼が中の人物までを――変装しているのが誰かまでを見抜けるのは、恐らく自分、鉢屋三郎だけなのではないだろうか。
そう思うのは自惚れ――か。

 あれから二度の春が過ぎた。
 
 忍術学園の卒業式。六年の課程を修了した三郎たちは、プロの忍者と遜色ない実力を兼ね備えて、忍術学園を卒業した。

 それ以降は、バラバラだ。

 級友の竹谷八左ヱ門はマイタケ城に就職したと言っていたし、悪友の久々知兵助は実家付近を納める大名の専任忍者になったと聞く。

 そして――親友の不破雷蔵は、三郎の忍務の敵国の忍者として。

 現在、鉢屋三郎はフリーの忍者だった。真の顔を知るものはなく、一種の伝説のようになっていた。

 当然だった――知られないよう振舞ってきたのだ。忍術学園に居た頃も。

 バケモノの術が得意なのだ。

 初めは悪ふざけのつもりだった。ころころと回る独楽のように、顔と挙動を変える。変わる。それが面白くて、そして皆に本当の顔を知られていないという優越感も伴い、三郎は親友にさえ真の顔を片鱗も見せなかった。
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